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油井宇宙飛行士活動レポート&ニュース
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2026.04.16

JAXA油井亀美也宇宙飛行士による帰国後記者会見

2025年8月から2026年1月までの約166日間宇宙に滞在した油井宇宙飛行士が、帰還後のリハビリを終え一時帰国しました。4月9日に実施した長期滞在ミッションに関する記者会見の模様をお伝えします。

帰国記者会見に臨む油井宇宙飛行士(Image by JAXA)

油井宇宙飛行士冒頭の挨拶(抜粋/要約)

本日は多くの方々に会見にお越しいただきましてありがとうございます。YouTubeをご覧の皆さんもご視聴いただきありがとうございます。クルードラゴン運用11号機(Crew-11)に搭乗した4人のクルーは、もともと別のミッションにアサインされていましたが、いろいろと計画変更があり、今回、Crew-11に乗ることになりました。私たちは「いつ飛ぶかよりも、誰と飛ぶかが大事」を合言葉にして、訓練を受け、宇宙に飛び立ちました。

ISSでは同期であり、親友の大西卓哉さんと再会し、とても嬉しかったです。大西さんからたすきリレーのように、業務の申し送りを受け、とてもスムーズにISSでの仕事に入ることができました。大西さんには感謝しています。

私が宇宙にいる間、本当にたくさんの補給機が来ました。その中の1つが新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)です。打ち上げの様子を、私は宇宙から見守っていました。力強く、美しく、私たちの方に向かってきてくれるロケットに感動しました。私は、ロボットアームを操作して、この金色の宝箱のような補給船を捕まえました。相対速度がゼロで、止まっているような感覚で、「簡単に捕まえられる」と感じたほどでした。地上では星出さんがサポートしてくれました。すばらしいチームワークでミッションを成功させることができたと思っています。

宇宙実験は、二酸化炭素除去装置の設置、細胞分裂の実験、燃焼や物性の実験、太陽系形成を模擬する実験、「きぼう」ロボットプログラミング競技会の準備、超小型衛星放出などを行いました。交信イベントや地元との交流、宇宙で紙飛行機を飛ばすイベントなどもありました。

余暇時間には宇宙から多くの写真を撮影しました。今回のミッションでは何十万枚というレベルで、富士山、台風、星、月、オーロラなど、さまざまな写真を撮り、それらの一部はEarth Diaryというサイトで公開しています。紹介できているのはごく一部ですが、ぜひご覧いただければと思います。これからも少しずつ追加していきたいと思っています。

宇宙に滞在している間、ISSに人が連続して滞在して25周年を迎えるという記念すべき時期に立ち会うことができました。人が四半世紀にわたって住み続けているというのは、本当にすごいことだと改めて感じました。また、私自身も300日滞在のお祝いをしてもらいました。ISSでは、それぞれの飛行士に何か節目があると、宇宙で手作りのケーキを作ってお祝いする文化があります。10年前にはなかった文化なので驚きましたが、とても良い文化だと思いました。

ISS長期滞在で共に過ごしたクルーメンバー(Image by JAXA)

11月にはソユーズのクルー交代があり、その際、ドッキングポートの都合でシグナス補給船が移動し、HTV-X1のそばに並ぶ形になり、その状態でソユーズがドッキングするということがありました。なかなか珍しい写真が撮れたと思っています。その時点でISSのすべてのドッキングポートが埋まり、本当にたくさんの宇宙船を見ることができました。

年末年始も仕事はありましたが、元日には特別にケーキを作って、みんなでお祝いしました。チョコレートで『2026』と書いてあるケーキでした。その後、船外活動の準備なども進めていましたが、急遽帰還することになり、慌ただしく準備を進めて帰還しました。帰還時は天候が良く、夜間に大都市周辺を通過する軌道だったので、多くの方々がこのように私たちの帰還を見守ってくださったと聞いています。自分がこの火の玉の中にいたのだと思うと、感慨深いものがありました。

無事にクルー全員が元気で帰って来られたこと、本当に良かったと思っています。この早期帰還についてはNASAとJAXA、そして支援してくださったすべての方々に感謝しています。

帰国記者会見の会場の様子(Image by JAXA)

質疑応答(抜粋/要約)

-今回、HTV-X1をキャプチャされ、国際的には特に生鮮食品をより新鮮な状態で届けられた点や、大型ハッチが高く評価されたと伺っています。HTV-Xの今後の国際的な評価や、発展性、将来的な活用について、どのように考えていますか。

HTV-Xは国際的に非常に高く評価されています。特に、ハッチがとても大きく、数百キログラムある大型の実験ラックをそのまま搭載して廃棄できる点は、NASAの宇宙飛行士やプログラムマネージャも非常に喜んでいました。大型構造物は分解して廃棄することが難しいため、これは大きな強みです。

HTV-Xは設計上、非常に発展性が高いと理解しています。例えば、サービスモジュール部分は内部が空洞構造になっており、将来的には複数機をドッキングさせて人が行き来できるような構想も視野に入れた設計になっています。今後、計画の優先順位や情勢が変わったとしても、月周辺への輸送、ISSへの補給、将来の民間宇宙ステーションへの輸送など、発展性があります。

HTV同士がドッキングし、小型の宇宙ステーションのように使う構想も含め、将来的には与圧モジュールに窓を備えた形態や、生命維持装置と太陽電池を組み合わせた『ミニステーション』的な運用も考えられる設計です。現時点で実現しているわけではありませんが、そうした可能性を見据えた非常に夢のある、柔軟性の高い設計だと思います。

大型ハッチを備えたHTV‑X1で運ばれた大型貨物の設置作業(Image by JAXA)

-アルテミス計画について、NASAから計画のドラスティックな変更の発表がありました。現場の宇宙飛行士の立場として、油井さんは、こうした変更をどのようにご覧になっていますか。

最初に聞いたときに、非常にリーズナブルだなと感じました。私はテストパイロットですので、新しいものを開発して、それを一気に進めるには非常に時間がかかるということをわかっていました。正直、当初の計画は少し急ぎすぎではないかなと思っていた部分がありましたが、今回の変更で、私自身も納得できる計画になりそうだと感じました。個人的には非常に歓迎しています。月面に到着する機会が増えることは、今現役で活動している人たちにチャンスが広がるということでもありますし、打ち上げ回数が増えていくのであれば、それも宇宙飛行士にとっては良いニュースです。基本的には、宇宙飛行士の間では、歓迎する声が多いのではないかと思います。

アルテミス計画は、新しい時代の幕開けとして、世界中の方々が注目し、応援しています。地球全体で応援するという気持ちがあれば、宇宙開発はこれからも発展していくでしょうし、明るい未来が開けてくると思います。また、現在進行中のアルテミス2では、搭乗している宇宙飛行士の多くを個人的によく知っていますので、強く応援していますし、無事の帰還を祈っています。

-今回のミッションを振り返ってみてのご感想をお聞かせください。

ミッション期間自体は計画より短くなりましたけれども、私自身はやりきったという思いがあります。一生懸命やって、自分ができることはすべてやったという感覚です。宇宙開発の分野では計画変更は当たり前にありますし、私たちのクルーも打ち上げの時点から計画がどんどん変更されていました。その前提で、できる仕事は前倒しで進めていましたので、早期帰還による影響も比較的小さく、引き継ぐべき仕事もしっかり引き継いで帰ることができました。そういう意味で、やりきったという気持ちがあります。今後は、この経験を日本の皆さん、世界の皆さん、そして後輩の育成に役立てていく必要があると考えています。

にこやかに記者からの質問に答える油井宇宙飛行士(Image by JAXA)

-前回の2015年のISS滞在と今回とで、油井さんの目やカメラを通して見た地球の見え方が、どのように変わったのか教えてください。

物理的な面でいうと、変わっているところは、とてもよくわかります。夜景を見ていると、10年前よりも発展した国は明らかに明るくなっていますし、ある程度成長しきった国は、宇宙から見てもあまり変化がありません。また、台風の写真も撮りましたが、前回よりも勢力の強い台風が多かったように感じました。

心境的な面では、宇宙から見ても、人間が仲良くやっている部分と、そうでない部分が見えてしまうという点は変わりません。ニュースなどで報道されているような、衝突や争いがある地域は、宇宙から見ても分かりますし、国境を挟んで明るさが極端に違う場所もあります。そういう光景を見ると、やはり悲しい気持ちになります。

その一方で、ISSの中では国籍の異なるクルーが互いを尊重し、助け合って仕事をしています。こうした文化が地上にも広がれば、宇宙から見える悲しい部分はもっと減っていくのではないかと考えるようになりました。いろいろなことを考えさせられました。

-今回、数多くの写真を撮影された中で、お気に入りの一枚があれば教えてください。

やはり星の写真が一番好きですね。特に月の写真は印象に残っています。クレーターがはっきりと写るような月の写真を撮るためには、適した窓を探す必要があり、そのために多くの方と調整しました。狙った写真が撮れたときは本当にうれしかったです。月は人類の次の目標でもありますので、そういう意味でもお気に入りの一枚です。

ISSから撮影した星景色。月は油井宇宙飛行士が特に印象に残った一枚(Image by JAXA)

-今年3月末に古川聡さんがJAXAを退職しました。JAXA宇宙飛行士の世代交代について、感慨深い点や思いを語っていただければと思います。

古川さんには、実は私が宇宙飛行士グループ長を務め、悩んでいるときに結構相談に乗っていただきました。古川さんのソフトな感じで励ましや助言をいただき、本当に感謝しています。宇宙飛行士グループを去ってしまうのは悲しかったですが、先輩飛行士がまったく違う分野に行って活躍し、それぞれの引退後の道も切り開いてくれています。私自身も、もう数年で引退することになると思いますが、引退する時が来たら、先輩飛行士がこれまでやっていないような分野に行き、後輩飛行士が興味を持てば、そうした道にも進めるようにしてあげられたらいいなと思っています。

記者からの質問に答える油井宇宙飛行士(Image by JAXA)

-今、宇宙飛行士を目指している子どもたちに向けて、メッセージをいただけますでしょうか。

宇宙飛行士になるということは、もしかすると夢物語のように、遠い目標に感じられるかもしれません。ただ、これからの時代は、宇宙がどんどん身近になり、職業の選択肢の一つとして、より現実的なものになっていくと思っています。

私が子どもの頃は、宇宙飛行士になることは本当に限られた人だけの世界だと思っていましたが、これからは宇宙旅行や民間宇宙活動も進み、宇宙で働く仕事の種類自体が増えていくはずです。そうなると、さまざまな才能が必要になります。宇宙飛行士になるかどうかに限らず、自分が好きなこと、得意なことをしっかり伸ばしてほしいと思います。理系、文系に関係なく、それぞれの強みを生かせる場面は必ず出てきます。

一方で、宇宙はとても厳しい環境ですので、チームワークは非常に大切です。学校や部活動、家庭の中で、周りの人と協力する力を身につけることも、とても重要だと思います。そうした積み重ねが、将来どんな道に進むとしても必ず役に立つと思います。

油井宇宙飛行士会見終了の挨拶(抜粋/要約)

本日は多くの方々に会見にお越しいただき、またYouTubeでご覧いただき、本当にありがとうございます。私自身、今回のミッションの目標として、『明るい未来を信じて、新たに挑む』というテーマを掲げて、皆さんに何かしらお返しができるようにと思いながらミッションに臨んでいました。

実際に終えてみると、皆さんにたくさん応援していただき、恩を受けるばかりだったように感じています。ミッションは終わりましたが、この後の私の残りの人生が、皆様に恩返しをできる期間だと思っています。もし何かありましたら、どんなことでもお声がけいただければ、全力でご要望に応えていきたいと思います。日本の皆様はもちろん、世界中のさまざまな方々とお会いして、私の経験をお話しし、明るい未来について語ることを、これからも続けていきたいと思っています。ぜひ、これからもよろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。

ガッツポーズで写真撮影に応じる油井宇宙飛行士(Image by JAXA)

会見には、15社22名のメディアが参加し、他にも多くの質問が寄せられました。その様子は、JAXA YouTubeチャンネルでアーカイブされていますので、ぜひご覧ください。

JAXA油井亀美也宇宙飛行士 帰国記者会見(1時間00分40秒)

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