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油井宇宙飛行士も参加した復興宇宙サミット。復興と宇宙をテーマに、参加者が意見を交わしました。
8月9日、福島県楢葉町コミュニティセンターで「第4回 復興宇宙サミット2026 in NARAHA 『宇宙(うえ)を向いて歩こう』」が開催されました。本サミットは、復興宇宙サミット2026実行委員会(福島県楢葉町、一般財団法人ワンアース)が主催する広域交流イベントで、2023年から毎年東日本大震災からの復興と宇宙をテーマに地域や世代を越えた交流を目的として開催されています。会場には、宇宙を旅した桜のタネから育てられた「宇宙桜」を復興のシンボルとして植樹し、後世に伝承する「きぼうの桜プロジェクト」でつながった県内外の団体や自治体関係者、中学生・高校生などが集いました。東日本大震災から15年を迎えた福島県浜通り地域で開催された今回は、将来の月探査に向けたプロジェクトに携わる関係者も参加。JAXAからは、月極域探査機(LUPEX)と有人与圧ローバーの開発に関わる職員が参加し、月探査の最前線について紹介しました。また、今年1月にISS長期滞在ミッションから帰還した油井亀美也宇宙飛行士も参加し、ISSでの長期滞在ミッションの成果を報告しました。さらに、ホワイエでは月探査の最新の取り組みや将来構想を紹介するポスター展示を行い、来場者からの質問に答えながら交流を深めました。
JAXA職員による講演 ―月探査ミッションの最前線
「月探査ミッションの最前線 ―月面での有人活動に向けて―」というタイトルで、月極域探査機(LUPEX)と有人与圧ローバーの開発プロジェクトに携わるJAXA職員が講演を行いました。
月極域探査機(LUPEX)
LUPEXプロジェクトチームの麻生が登壇し、インド宇宙研究機関(ISRO)との共同開発体制で進むLUPEXミッションについて紹介。月南極へ送り込まれる探査機が、月面に潜む「水資源」の量や存在状態をドリル掘削などで直接探査することを説明しました。そして、この探査で得られる越夜技術や走行技術は、将来の有人与圧ローバー開発に活かされるだけでなく、現地で水を水素と酸素に分解してロケット燃料に変え、持続可能な有人月面活動や月面基地建設の実現へと繋がると語りました。
月極域探査機(LUPEX)ミッションについて紹介する様子(Image by JAXA)
有人与圧ローバー
有人与圧ローバー開発チームの桜庭が登壇し、日米の合意に基づき進む、有人与圧ローバーの開発について紹介。本計画では、日本がローバーを提供・運用する代わりに、米国より日本人宇宙飛行士2名の月面活動機会が提供されることを説明しました。また、極低温の月南極域において、飛行士がローバー内でシャツスリーブ(軽装)のまま長期間移動・居住できることや、現在はトヨタ自動車などと試作車を用いた走行試験や操縦訓練が重ねられていることも紹介。先行するLUPEXのデータも取り入れながら、持続可能な有人月面探査の基盤となる巨大モビリティの実現を目指していることが伝えられました。
有人与圧ローバーについて紹介する様子(Image by JAXA)
油井宇宙飛行士によるミッション報告と質疑応答コーナー
会場からの大きな拍手に迎えられた油井宇宙飛行士が壇上に上がり、「私の宇宙での経験を皆さんに共有する機会をいただき、ありがとうございます」と挨拶。そして、壇上のスクリーンに映像を投影しながら、国際宇宙ステーションでの約5か月間にわたる長期滞在ミッションについて報告を行いました。大西宇宙飛行士から業務の引き継ぎをし、「きぼう」日本実験棟でさまざまな実験・実証を行なったこと。そこから得られた成果が積み重なり、月や火星を目指すための技術に活かされること。また、ISSと地上をつないでの交信イベントや宇宙からの写真や動画のSNS投稿といった広報活動も宇宙飛行士の仕事のひとつであることを紹介しました。さらに、宇宙での生活についても触れ、水だけで剃れるひげそりの様子や、お風呂の代わりに特殊なシートで体を拭く工夫について紹介しました。ミッション報告の最後には、ISSから撮影した福島県浜通り地域や楢葉町周辺の写真も紹介しました。油井宇宙飛行士は、「10年前と比較すると、街の光の強さからも復興が進んでいることが分かる」と語り、宇宙から見た福島の姿を参加者と共有しました。
長期滞在ミッションについて報告する油井宇宙飛行士(Image by JAXA)
ISSから見た福島県楢葉町の様子を紹介する油井宇宙飛行士(Image by JAXA)
続いて行われた質疑応答のコーナーでは、会場の参加者から受けた質問にその場で回答。まず、「地球は本当に青かったですか?」という質問には、「言葉を失う美しさだった」と答える一方、宇宙との境界線である大気の層が驚くほど薄いことを目の当たりにしたと告白。「この環境をしっかり守らなければ壊れてしまう」と、地球環境保護への切実な危機感を訴えました。また、「宇宙でカメは飼えますか?」という質問には、「事例はないが、今後は月や火星へ動植物を連れて行く時代になる。将来研究を重ねて、ぜひカメと一緒に宇宙を目指してほしい」と笑顔で温かいエールを送り、会場を和ませました。さらに、前職の航空自衛官から宇宙飛行士を目指した経緯を問われると、自身の挫折と努力の歩みを振り返りました。経済的事情で防衛大学校に進学し、一時は夢を諦めかけましたが、「目の前のやるべきことに一生懸命取り組めば可能性は広がる」という先輩の教えを信じて奮起。厳しい訓練や学問に励み夢を掴み取った体験から、「好きな気持ちを胸に、目の前のことに頑張り続けることが大切」と力強く語りかけました。
会場の参加者から受けた質問に応える油井宇宙飛行士(Image by JAXA)
自治体・企業・学生代表による交流トーク
講演が終わったあとは、各自治体の代表者、中高生の代表者、油井宇宙飛行士、講演を行なった企業の代表者が一堂に会して、交流トークが行われました。ここでは、それぞれの地域の特徴や復興のあゆみ、東北復興宇宙ミッションの成果物や「きぼうの桜」の活用についての発表がされました。また、学生からの復興に関する質問に、自治体や企業の代表者が具体的な取り組み事例を交えて回答するなど世代間の交流もあり、復興のその先に向かって次世代とともに考える時間となりました。
交流トークの様子(Image by JAXA)
JAXAブースでの資料展示および来場者との交流
今回のイベントでは、JAXA職員による講演以外にも、ホールの外に設けたJAXAの展示ブースでLUPEXや有人与圧ローバーに関する情報発信を行いました。ブースでは、講演を行なったJAXA職員が案内役を担当。訪れた方々の質問に答えるなど、活発に交流しました。その中では、「今回のようなイベント以外で、普段どこに行けば情報が得られるのか知りたい。子どもを連れていきたい。」といった声も聞かれ、大人にも子どもにも興味を持っていただく機会となりました。
展示ブースでの交流の様子(Image by JAXA)
これまでの復興の歩みを振り返りながら、宇宙という大きな夢を通じて、次世代へバトンをつなぐ有意義な場となった本サミット。宇宙桜の縁で結ばれた仲間たちが集まり、月探査の最前線の話や油井宇宙飛行士の情熱に直接触れたことは、地域や世代を超えた新たな「希望の光」を生み出すきっかけのひとつになったのではないかと思います。
関連リンク
- 【LIVE】復興宇宙サミット2026 in 楢葉 油井宇宙飛行士ミッション報告会(Youtube 22分36秒)
- 【LIVE】復興宇宙サミット2026 in 楢葉 交流トーク(Youtube 1時間13分50秒)
- 月極域探査機(LUPEX)
- 有人与圧ローバー
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