Report & News
クリスマスイブに宇宙とつながる―山形県鶴岡市で油井亀美也宇宙飛行士とのリアルタイム交信イベントを開催
2025年12月24日(水)、クリスマスイブに、国際宇宙ステーション(ISS)と山形県鶴岡市の会場を結ぶリアルタイム交信イベント「庄内から宇宙へ!episode6 -星降る夜の交信作戦」が開催されました。会場には約800人が来場し、多数のメディアも取材に訪れました。ISSから油井亀美也宇宙飛行士が参加し、宇宙と地上をつなぐ特別なひとときとなりました。
第1部 国際宇宙ステーション(ISS)を知ろう!
第1部では「国際宇宙ステーション(ISS)を知ろう!」と題したトークセッションが行われました。まず、JAXA有人宇宙技術部門の小澤瑞希が登壇し、ISSや「きぼう」日本実験棟の概要、宇宙飛行士の仕事について紹介しました。クイズを交えながら、ISSが飛行する高度や軌道の特徴をわかりやすく解説し、2015年に油井宇宙飛行士が行った長期滞在ミッションについても触れました。
ISSの仕組みをクイズ形式で紹介するトークセッションの様子(Image by JAXA)
続いて、「きぼう」運用管制員である本間智穂が登壇。「きぼう」を24時間365日支える地上管制員の仕事について語りました。「きぼう」地上管制員は、リアルタイム交信イベントの台本や宇宙実験の手順書などを事前に準備して、宇宙飛行士に渡します。それだけでなく、予期しない出来事が起きた時の対処法も準備して、イベントや実験に臨むといった裏話も明かしました。ISSの運用は、標準世界時で行われるため、日本とは9時間の時差があります。そのため、宇宙飛行士が関わる実験が行われるのは、日本時間の夕方から夜になることや、宇宙飛行士が寝ている時間帯は「きぼう」の実験装置を地上からリモートコントロールして、実験を進めることなど、様々な話題が語られました。
「きぼう」を支える仕事の舞台裏を語る運用管制員の本間(Image by JAXA)
多くの来場者が集まった会場の様子(Image by JAXA)
第2部 リアルタイム交信イベント【宇宙へメリークリスマス】
第2部では、ISSと会場をつないだリアルタイム交信が行われました。スクリーンにサンタ帽をかぶった油井宇宙飛行士の姿が映し出され、会場からは「おおー」という歓声と拍手が起こりました。司会者の呼びかけで来場者全員が「メリークリスマス!」と声を送ると、油井宇宙飛行士は手を振って応え、「皆さんの声が宇宙に届きましたよ」「皆さんとクリスマスの夜を過ごすのを本当に楽しみにしてきました。」と応え、交流がスタートしました。
冒頭では、微小重力環境の特徴について紹介。コーヒーを使った実演では、液体が球状になって浮かぶ様子を見せ、宇宙ならではの現象をわかりやすく伝えました。また、物が浮く環境で生活するために、マジックテープで壁やズボンに貼り付けたり、腰に巻き付けたポシェットに入れたりするといった工夫についても語りました。
宇宙生活における工夫を解説する油井宇宙飛行士(Image by JAXA)
続いて行われた質問コーナーでは、宇宙での生活や仕事に関する疑問から将来の夢に関わる問いまで、多彩な質問が取り上げられました。主催者および子どもたちからの質問に対し、油井宇宙飛行士は具体的なエピソードを交えながら丁寧に答えました。
子どもの頃の過ごし方や宇宙飛行士になるまでに役立った経験については、「理科や星など、自分の好きなことは徹底的に勉強していましたが、苦手な教科もありました。また、家のお手伝いを通じてチームワークを学びました」と振り返りました。
また、「宇宙では基本的に何でも自分でやる必要があるため、地上で経験したことはどんなことでも役に立つ」と述べ、ゲームやプログラミングがロボットアーム操作やトラブル対応に活かされていることを紹介しました。 その後も、子どもたちから宇宙での生活や仕事に関するさまざまな質問が寄せられました。
-ISSの中で自由に遊べるとしたら何がしたいですか? 僕は鬼ごっこがしたいです。
-鬼ごっこいいですね。でも宇宙ステーションでは動き出すと止まるのが大変なので、他のクルーとぶつからないようにしないといけませんね。後は、かくれんぼや宝探しも楽しそうですね。
-ISSからロケットの打上げや大気圏から出てくるところは見えますか?
地上から打ち上がる様子は宇宙からも見ることができます。先日、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地からソユーズ宇宙船が打ち上がって、3名のクルーがISSに到着しました。その時はみんなで窓にかじりついて打ち上げの様子を見て、写真をたくさん撮りました。本当に美しかったです。こういう景色をみんなが宇宙から見られるようになる時代が来ますので、楽しみにして、勉強、遊び、お手伝いをがんばってください。
-油井さんの好きな宇宙食は何ですか?
宇宙食にはいろいろなものがあります。今日はサンタさんが靴下に届けてくれた宇宙食を紹介します。(後方にかけてあった大きな靴下から取り出して)これは、お湯を加えてつくるごはんです。とてもおいしくて、世界中の宇宙飛行士から大人気です。あと、レトルトパックで温めるウナギも最高においしいです。ごはんとウナギの組み合わせは最強ですね。他の宇宙飛行士も楽しんでいます。
(もう1つ取り出し)他にも缶詰めになっている宇宙食もあります。私のお気に入りはカレーです。宇宙用に特殊になっていて、少し粘り気を強くして、飛び散らないようになっています。その他、お餅などの、日本らしいものもたくさんあります。こういうものを食べ、日本を思い出し、パワーを得ながらがんばっています。
クリスマス演出とともに宇宙食を紹介する油井宇宙飛行士(Image by JAXA)
-宇宙での生活リズムや時間の感じ方はどうなりましたか?
宇宙ステーションは90分で地球を一周します。その度に日が昇ったり、沈んだりしますが、そのリズムでは私たちは生活できないので、宇宙ステーションの中では、標準世界時というイギリスの冬時間を使っています。日本との時差は9時間です。私は朝6時に起きて、夜9時半に寝てと、基本的には規則正しい生活をしています。
ISSの中の照明は、夜の間はしっかりと消すようになっています。朝になると朝モードの少し明るい光にして、体が朝だと感じるようにします。夕方になると、夕焼けのような赤みを帯びた光にすることができるので、光を切り替えながらリズムを保てるようにして生活をしています。
-もし、ISS内に何でもつくれるとしたら、何をつくりたいですか?
私は星が大好きなので、宇宙側を向いた窓をつくりたいです。ISSには地球観測用に地球の方を向いている窓が多く、星空を見る窓があまりありません。星空だけが見える窓ができたらすばらしいと思います。
-宇宙飛行士になるのは大変ですか?
宇宙飛行士になるのは非常にたいへんですが、一番大切なことは、まず宇宙飛行士になりたいという夢を持つことです。ただ、一人だけだとくじけそうになったり、諦めそうになったりすることがたくさんあります。そういう時に、他の人たちが私の夢を知っていて励ましてくれました。そういう形で、周りの人から助けられながら夢を叶えていきました。
夢は家族や友だちなど、いろいろな人に話して、お互いに助けあうことが大切です。助け合うことで、自分の夢も他の人の夢も叶えられます。いろいろな人と助け合っていけば、夢が叶う確率はどんどん上がってきます。たとえ叶わなかったとしても、別の夢ができたときにそれが視野に入ってきます。がんばったことは、将来のすばらしい道につながっていきますので、夢を大切にしてがんばってください。
-宇宙での生活は地上での生活とは違う体の不調が出てくるのかなと想像していますが、ISSでは、どんな医療者がどんなサポートをしているのでしょうか?
ISSには医師のバックグランドを持った人がいるとは限らず、今もISSに医師はいませんが、地上に専属の医師がいて、何でも相談できるようになっています。毎週1回は打ち合わせを行い、何かあれば随時連絡して支援を受けることができます。ISSにはたくさんの薬が用意されており、医師の診断を受けて飲むことができます。ただし、緊急時にはクルーで対応する必要があるため、心臓マッサージ、物を詰まらせたときの対処、採血、麻酔の打ち方などの医療訓練も受けています。
-ISSという限られた空間の中で、どのようにして自分のモチベーションを高めていますか?
一人だとモチベーションをずっと保つことは難しいです。気分が乗っているときもあれば、仕事がうまくいかなくて塞ぎ込んだりすることもあります。そういう時に一番役に立つのは、他の人から励ましてもらうこと、チームワークです。私自身も、落ち込んだり、失敗したりしたときは、隠さずにいろんな人に話を聞いてもらっています。
私は45歳を過ぎて、ロシア語を本格的に勉強し始めたのですが、最初はまったく成果が出なくて落ち込み、勉強が嫌いでした。でも、言葉を学ぶ目的はテストでいい点を取ることではなく、他の人と話をして友達をつくったり、チームをつくったりするためだと考え直して、いろんな友達をつくりロシア語を話すようにしたら、楽しくなりました。
やらなければいけないことが進まないときは、そのことが好きになる方法を考えてからやるのが、モチベーションを保つ1つのコツになると思います。
子どもたちの質問に丁寧に答える油井宇宙飛行士(Image by JAXA)
-もしも、ISSの中で炎を出したらどうなりますか?
ISSでもものを燃やす実験をやっていますが、しっかりした密閉容器の中で、火事にならないように管理された状況で行っています。もし、キャビンの中で火を出してしまったら、煙探知機があるので、すぐに火災警報が鳴ってしまいます。ISSでは対流が起きないので、火はローソクのように縦長にならず、ほぼ丸くなって燃えると思います。また、対流がない状態では、火が燃えても周囲の酸素がなくなり、二酸化炭素に囲まれてしまうので、火はすぐに消えてしまいます。ISSで火災が起こった場合は、換気を止めてすぐに火が消えるしくみになっています。
-もし星座をつくれるとしたら、どんな星座をつくりますか?
私の名前「亀美也」の「亀」は、動物の亀の漢字なので、ぜひ「亀座」をつくりたいです。今度、星空を眺めたときに、どこにつくったらいいかを考えてみたいと思います。
展示ブースで宇宙服体験を楽しみ、記念撮影をする子どもたち(Image by JAXA)
油井宇宙飛行士から会場の皆さんへメッセージ
今日はクリスマスイブということで、会場にお越しいただきありがとうございました。私自身、皆さんからパワーを頂いて、皆さんが私のサンタさんになってパワーをくれたと考えています。これから残りの長期滞在の期間も、皆さんの日々の生活に活力が出るようにがんばっていきたいと思いますので、応援のほどよろしくお願いいたします。今日はどうもありがとうございました。
最後に、会場から「油井さん、がんばってください」とエールを送り、イベントは終了しました。
会場からのエールに笑顔で応える油井宇宙飛行士(Image by JAXA)
イベントの様子はダイジェスト動画でも公開しています。ぜひご覧ください。
【宇宙へメリークリスマス!】庄内から宇宙へ 星降る夜の交信作戦 ダイジェスト(36分05秒)
関連リンク
※本文中の日時は全て日本時間