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油井宇宙飛行士 軌道上活動レポート Vol.9(11/24〜12/7)
12月に入り、地上は年の瀬の雰囲気が出てきました。宇宙では、ISS運用の区切りとなるイベントが実施されました。それでは、この期間で行われた油井亀美也宇宙飛行士の活動の一部をご紹介します。
11月24日、防衛大学校とのリアルタイム交信イベントに出演しました。防衛大学校の学生からだけでなく、神奈川県横須賀市内の小中高校生からの質問にも答えました。
学生、地域の小中高校生とリアルタイムで交信する油井宇宙飛行士(Image by JAXA/NASA)
同日、ISSの「ユニティ(第1結合部)」にドッキングしていたシグナス補給船運用23号機(NG-23)を一時的に分離し、ロボットアームのカナダアーム2で把持しました。これは、ソユーズMS-28宇宙船(74S)を安全に迎えるため、飛行経路の障害物を避ける目的で行われたものです。カナダアーム2で把持されたNG-23は、新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)の近くに位置しています。油井宇宙飛行士は、26日に、この珍しい状況をSNSで紹介しました。(油井宇宙飛行士 X)
皆さん、こんにちは!
— 油井 亀美也 Kimiya.Yui (@Astro_Kimiya) November 26, 2025
撮影したてのタイムラプスをお届けいたします。
お天気の良かった地域は、この映像に写っていると思いますので、自分の住んでいる所や思い出の場所を探してみてください。
HTV-Xくんとシグナスくんがコラボしている期間限定の貴重な映像になると思います。 pic.twitter.com/gW8VdUwpBZ
11月25日、ISSに設置されている宇宙飛行士用ノートパソコンPLT(Payload Laptop Terminal)のセットアップをし、「きぼう」内の物品整理を行いました。
11月27日21時34分に、74SがISSとドッキングしました。その後、74Sのハッチが開かれ、ロシアのセルゲイ・クド=スヴェルチコフ宇宙飛行士、セルゲイ・ミカエフ宇宙飛行士、米国のクリストファー・ウィリアムズ宇宙飛行士の3名がISSに移り、ISSはクルー10名体制となりました。
現在、JAXAでは2026年に打ち上げ予定の火星衛星探査計画「MMX」への応援メッセージを募集する企画「#グッドラックMMX」を実施しています。寄せられたメッセージは探査機に搭載され、火星圏の滞在を経て、2031年に地球へ帰還する予定です。油井宇宙飛行士も応援のメッセージを届けました。たくさんの方からのメッセージをお待ちしております。(油井宇宙飛行士 X)
また、「きぼう」船外実験プラットフォームに設置されている高エネルギー電子・ガンマ線観測装置(CALET)が観測開始から10周年を迎えました。CALETは高いエネルギー領域の宇宙線を精密に観測する宇宙線天文台といえる装置で、2015年8月19日に宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機で打ち上げられました。このとき、「こうのとり」5号機をISSでキャッチし、CALETの設置支援をしたのが油井宇宙飛行士だったのです。ちなみに、高エネルギー宇宙線を精密に観測する装置が宇宙空間に設置されたのはCALETが世界初で、世界の高エネルギー宇宙線研究をリードしてきました。油井宇宙飛行士にとっても思い入れの深い装置です。油井宇宙飛行士が寄せたCALETへのメッセージは、Xでご覧いただけます。(油井宇宙飛行士 X)
11月28日、74SとソユーズMS-27宇宙船(73S)の2機の宇宙船が並んでISSとドッキングしている様子を油井宇宙飛行士が撮影しました。引き継ぎ期間は、一時的にISSのクルーが増え、にぎやかになり、宇宙飛行士にとっても楽しい時間となったようです。 (油井宇宙飛行士 X)
ISSから撮影したソユーズMS-28とMS-27(Image by JAXA/NASA)
12月1日、PLTの片づけを行い、SNSで「簡易型生体試料混和装置技術実証(Biological sample Mixture Device: Bio-Mixturez(BMX))」実験を紹介しました。BMXは微小重力環境で2種類の液体を簡単・安全にブレンドする装置で、宇宙空間での生命科学研究に大いに役立つと期待されています。
軌道上でBio-Mixture実証を行う油井宇宙飛行士(Image by JAXA/NASA)
12月2日、地上から「きぼう」ロボットアームを操作し、「きぼう」エアロックから米国の超小型衛星放出機構(NanoRacks CubeSat Deployer:NRCSD)を船外に搬出し、小型衛星放出ポジションへ移動させました。その後、地上からの操作で、NRCSDの29回目の小型衛星放出を実施しました。油井宇宙飛行士は、11月20日に「きぼう」エアロックのスライドテーブルにNRCSDを設置する作業を行っています。
12月3日~4日、「きぼう」のコンピュータネットワークにギガビットケーブルを設置し、このケーブルを通してコンピュータを接続しました。その後、地上から機能確認を実施しました。機能確認後に取り外しました。
また、JAXAは衛星全球降水マップ(GSMaP)を通し、宇宙から雨の状況を監視し、世界162カ国で、降水監視、洪水予測、干ばつ監視などに役立てられています。11月下旬に東南アジアで発生した豪雨もリアルタイムに降雨の状況を監視し、その状況を各国に知らせていました。12月3日には、そのときの解析結果を公表しています。人工衛星を活用することで、油井宇宙飛行士がISSから見た雲の下ではどんなことが起こっているのかを知ることができるのです。(油井宇宙飛行士 X)
12月5日、米国のマイケル・フィンク宇宙飛行士と共に、「きぼう」エアロックのスライドテーブルに設置された親アーム先端取付型実験アダプタ(Multi-Purpose Experiment Platform:MPEP) と NRCSDを取り外しました。
12月7日、ISS船長(コマンダー)の交代セレモニーが行われ、ロシアのセルゲイ・リジコフ宇宙飛行士からフィンク宇宙飛行士にISS船長の任が引き継がれました。ISSの運用も一区切りとなり、新体制がスタートします。
今回のベストショットは、ISSから撮影した富士山と、油井宇宙飛行士の母校である長野県野沢北高校、防衛大学校の写真です。宇宙から見る富士山も美しいものですね。母校を撮影できて、油井宇宙飛行士も嬉しそうでした。(油井宇宙飛行士 X)
ISSから撮影した富士山(Image by JAXA/NASA)
今回のレポートは以上です。
次回は来年1月初旬を予定しています。どうぞお楽しみに!
皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。
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