Report & News
ISSと地上をつなぐ特別交信イベント「油井宇宙飛行士と話そう!」が防衛大学校で開催されました。
イベント会場の様子(Image by JAXA)
今年8月から国際宇宙ステーション(ISS)で長期滞在ミッションを行なっている油井亀美也宇宙飛行士。その活動を広く知っていただくため、JAXAではISSと地上をリアルタイムでつなぐ交信イベントを企画し、主催いただける団体を募集しました。たくさんの応募の中から、油井宇宙飛行士の母校である防衛大学校が選定され、地域の小中高校生も参加のもと、11月24日に特別交信イベント「油井宇宙飛行士と話そう!」が開催されました。
宇宙クイズショー
交信に先だって行われたのは、来場者参加型の宇宙クイズ。 ISSや「きぼう」日本実験棟、油井宇宙飛行士の活動や今後の宇宙開発などに関する全10問が出題されました。以下はその一例です。
- 人類が宇宙に建設した最大の建物であるISS。太陽電池パネルを含めた全体の大きさ(幅と奥行き)は?
- ISSに設置されている日本の実験棟「きぼう」。この「きぼう」にある、他の国の実験棟にはない珍しい特徴は?
- 2015年にISS 第 44/45次長期滞在クルーとして活動した油井宇宙飛行士。その際、宇宙に滞在した日数は?
- ISSへ物資を輸送するためにJAXAが開発した新型の無人補給機「HTV-X」。その最も大きな役割は?
- アメリカのNASAを中心に進められている月探査計画「アルテミス計画」の最大の目標は?
参加者は3択の中から挙手で回答。1問ごとに正解が発表され、不正解者は脱落するルールです。クイズの解説は、防衛大学校航空宇宙工学科の松下教官が担当。最後まで残った博識な参加者には記念品が進呈されました。
宇宙クイズショーの様子(Image by JAXA)
ISSいまどこ?
続いて「ISSいまどこ?」のコーナーでは、ISSが、地上から約400km上空に建設された有人実験施設で、全体の大きさはサッカー場ほどあることが紹介されました。さらに、地上から肉眼で捉えられることも説明されました。
また、ISSを見てみたいと思った際は、スマホで「ARきぼう予報」というサイトにアクセスする と、通過方向・時刻・仰角が表示され、ISSの位置が分かりやすくなることも紹介されました。
実際に防衛大学校から撮影されたISSの写真が映し出されると、軌道が光の筋のように見える様子に感嘆の声が上がりました。
「ISSいまどこ?」のコーナーの様子(Image by JAXA)
油井宇宙飛行士とのリアルタイム交信
いよいよ本イベントのハイライト、油井宇宙飛行士が滞在するISSと会場をつないでのリアルタイム交信のスタートです。会場前方のスクリーンに、油井宇宙飛行士の姿が映し出されると、「おぉぉ」という歓声と拍手が起こりました。油井宇宙飛行士は、会場の皆さんに挨拶を行い、ISSでの出来事や自身が取り組んでいるミッションなどの近況を報告。自身が把持したHTV-Xの話題にも触れ、「日本の技術力の高さを実感しました」と語りました。
続いて、小学生、中学生、高校生、防衛大学生、それぞれの代表者が油井宇宙飛行士に質問。油井宇宙飛行士は、すべての代表者に「質問ありがとうございます」と応答し、ニコニコと楽しそうに質問に答えました。
油井宇宙飛行士とのリアルタイム交信の様子(Image by JAXA)
―宇宙の気温はどんな感じですか?朝や夜はあるのですか?(小学生代表)
「きぼう」の室内はエアコンが効いており、だいたい23℃くらいです。いつも快適な温度に保たれています。一方、ISSの外側は、太陽が当たっている時は100℃以上、当たっていない時はマイナス100℃以下になります。また、ISSは約90分で地球を1周します。90分ごとに日が上ったり沈んだりしますが、そのリズムに合わせて生活することは困難なので、イギリスの時刻に合わせて生活をしています。
―ISSで人気ナンバーワンの宇宙食は何ですか?(小学生代表)
宇宙日本食はとても人気が高く、どの宇宙飛行士も「おいしい」と言って食べています。私が大好きなのはカレーライスです。近年、認証された宇宙日本食のひとつに、うなぎの蒲焼があるのですが、それは本当に大人気で、仕事を手伝ってくれた宇宙飛行士にお礼としてあげたりします。そうすると、次も喜んで手伝ってくれます。
―宇宙でいちばんきれいだった景色は何ですか?(中学生代表)
私は星を見るのが大好きなので、宇宙から見る星は素晴らしい景色です。空気がないので瞬きませんが、真っ暗なのでたくさん見えます。この間は、太陽フレアの影響で日本でもオーロラが見えたようですが、宇宙から見るオーロラも絶景です。オーロラに限らず、宇宙から見える景色すべてが素晴らしく絶景です。
―宇宙飛行士になるまでには、大変な訓練や選抜があったと思いますが、「もうだめだ」と思った時に、どうやって気持ちを立て直しましたか?(高校生代表)
宇宙飛行士になる時以外にも、「もうだめだ」と思ったことは何回もあります。そんな時は「あと1日くらいは頑張れるのでは…」と、短い目標を決めて頑張ってみることにしています。そして「今日やれたから明日も…」と少しずつ目標を伸ばしながら頑張ってきました。ただ、自分1人で頑張っていると、心の限界が来て諦めそうになることも多かったです。ですが、その度に先生や友達などが「君はもっとやれるはずだ」と励ましてくれて、まわりの人に助けられながら乗り越えてきました。
参加者からの質問に答える油井宇宙飛行士(Image by JAXA)
―宇宙飛行士は言語や医学、ロボット操作など、たくさんの分野を学ぶと思います。専門外のことを短期間で身につけるためには、どんな勉強法や考え方が大切ですか?(高校生代表)
苦手なこと、嫌いなことに向かう際は、嫌々やっていてもなかなか成長しないので、私は好きになる方法を考えて、好きになってから取り組むように心がけていました。例えばロシア語は、最初は嫌々勉強していました。そのため何年経っても上達しませんでしたが、友達を作ったことで会話が楽しくなり、そこからは一気に伸びました。なので、その勉強をまず好きになることが大事だと思います。
―ISSでは様々な国のクルーと生活されていますが、言葉や文化の違いを超えて、チームワークのために一番大切だと思うこと、意識していることは何ですか?(防衛大学生代表)
それぞれの国の言葉や文化、歴史は異なりますが、それを良い悪いではなく、単なる違いとして理解し、リスペクトすることが大事だと思っています。私自身、ISSではロシアの宇宙飛行士と話す時はロシア語を、アメリカの宇宙飛行士と話す時は英語を使います。彼らの方も、私と話す時は片言の日本語を使って話しかけてくれたりします。そういった互いを尊重し合う気持ちが非常に大切だと思います。そのためには、相手の国のことや言葉を勉強する努力も必要だと思います。
―防衛大学校での生活で一番印象に残っていること、やっておけばよかったと思うことはありますか?(防衛大学生代表)
私は今でも時々、「名札の縫いつけが悪い、アイロンがけが悪い」と注意される、防衛大学生だった頃の夢を見ます。そのくらい大変だった思い出がありますが、防衛大学校での生活、勉強、訓練、すべてが今に役立っていると思います。皆さんも、本当に大変だと思いますが、今を頑張ることで将来の道がどんどん広がっていくはずです。やらなければならないことにはすべて全力で取り組んでみてください。
―油井宇宙飛行士の書籍の中で、前回のフライトでのハイライトは「こうのとり」のキャプチャとありましたが、今回のHTV-X のキャプチャの感想をお聞きしたいです。(防衛大学生代表)
ISSは秒速約8kmのスピードで動いていますが、種子島から打ち上げたHTV-Xを、そのISSから10mの位置で相対距離をゼロにして止めるという日本の技術はすごいと思いました。ロボットアームを操作して把持するには技術が必要ですが、相対速度がゼロになっていて止まっているように見えたので、ラクにキャッチできました。皆さんには、日本がそのような高い技術を持っていることを誇りに感じてもらい、日本の未来は明るいと実感して、今後も技術力を伸ばしていって欲しいと思います。
質問に回答し終えると、油井宇宙飛行士はあらためて本イベントの企画者と参加者に感謝の言葉を述べ、「今日は皆さんからたくさんの元気をいただきました。残り3か月ほどある滞在も頑張っていこうと思います」と力強く語りました。そして、「日本の明るい未来のために、お互いに頑張っていきましょう」というメッセージを送りました。
JAXA職員 ✕ 防衛大学生トークセッション
休憩後、JAXA追跡ネットワーク技術センターに所属する職員と防衛大学校の代表学生とのトークセッションを実施。テーマはスペースデブリと宇宙状況把握(SSA)の重要性です。会場前方のスクリーンには、解説用のスライドが投影され、次のような内容が詳しく説明されました。
- SSAの仕組みや役割は?
- SSAの分野で、具体的にどのような分野の仕事を担当されているのか?
- 現在、宇宙にはどのくらいのスペースデブリが存在し、それがどんな危険をもたらすのか?
この中で、宇宙に存在するスペースデブリを含む人工物体は、把握されているだけでも3万個を超えていること、ISSと同じ地球低軌道を飛ぶデブリは非常に高速であることが紹介されました。そのため、わずかな質量であっても、その運動エネルギーは膨大で、ぶつかれば人工衛星を破壊する可能性があることが語られました。そして、そのようなスペースデブリによって起こりうるリスクや危険を回避するために、SSAが役立っていることが説明されました。
JAXA職員と防衛大学校の学生とのトークセッションの様子(Image by JAXA)
最後に、防衛大学校の宇宙システム技術研究同好会の学生から質問が寄せられ、現役JAXA職員との交流も実現。宇宙領域の安全と技術に関心のある学生にとって、非常に有意義な時間になりました。
防衛大学校の宇宙システム技術研究同好会の学生5名からの質問コーナーの様子(Image by JAXA)
今回のイベントは、ISSで活動する油井宇宙飛行士と直接交信する貴重な機会となり、宇宙開発の現場を身近に感じていただける時間となりました。JAXAは今後も、宇宙を通じて未来を担う世代に夢と希望を届ける取り組みを続けていきます。
※本文中の日時は全て日本時間