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油井宇宙飛行士 軌道上活動レポート Vol.5(9/29〜10/12)
新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」1号機(HTV-X1)の打上げが迫ったこの期間は、ISSでもHTV-X1を迎える準備が着々と進められました。
この期間で行われた油井亀美也宇宙飛行士の活動の一部を紹介します。
9月29日、静電浮遊炉(Electrostatic Levitation Furnace: ELF)で使用する機器を交換し、地上からソフトウェアを更新しました。ELFは、静電気力によって浮遊させた試料をレーザー光で加熱することで、容器などを使わずに、溶融・凝固させることのできる装置です。地上では重力の影響を受けますが、微小重力環境のISS内では地上で浮遊させることのできない物質の物性を精密に測定することができます。
9月30日、ELFの試料ホルダと試料カートリッジを交換しました。
10月1日、新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」1号機(HTV-X1)の到着に備え、「きぼう」内の物品整理をしました。HTV-Xは宇宙ステーション補給機「こうのとり」の後継機として、実験機器、食料、宇宙飛行士の日用品など、様々な物資をISSに届ける補給機です。ISSに物資を運んだ後は、宇宙空間での技術実証実験のプラットフォームとしても活用されます。
10月2日、固体燃焼実験装置(Solid Combustion Experiment Module:SCEM)のガスボトル配管のバルブを開き、「火災安全性向上に向けた固体材料の燃焼現象に対する重力影響の評価(Fundamental Research on International Standard of Fire Safety in Space -base for safety of future manned mission: FLARE)」実験を開始しました。
10月3日、前日から実施していたFLARE実験実験を終え、SCEMのガスボトル配管を閉めました。
10月4日、油井宇宙飛行士がSNSで、JAXAサテライトナビゲーターの投稿を引用する形で、衛星観測データが気象や防災の研究に役立てられる例を紹介しています。この日、油井宇宙飛行士は「きぼう」で動画の撮影も行いました。(油井宇宙飛行士 X(1)、油井宇宙飛行士 X(2))
10月6日、油井宇宙飛行士と米国のマイケル・フィンク宇宙飛行士が協力して、「きぼう」エアロックのスライドテーブルに親アーム先端取付型実験アダプタ(Multi-Purpose Experiment Platform:MPEP)と小型衛星放出機構(JEM Small Satellite Orbital Deployer: J-SSOD)を取り付けました。9月19日に引き続き、超小型衛星を放出する準備が進められています。さらに、SCEMガスボトル配管のバルブを開き、FLARE実験が再び始められました。
 
  J-SSOD#33放出ミッションに向け船内取付け作業を行う油井宇宙飛行士(Image by JAXA/NASA)
10月7日、油井宇宙飛行士は、地上のスタッフと連携してJ-SSODの機能を確認した後、J-SSODに多層断熱材(Multi Layer Insulation:MLI)のカバーをしました。また、JEM船内可搬型ビデオカメラシステム実証2号機(Int-Ball2)を使用した技術実証を行う際には、油井宇宙飛行士がInt-Ball2の飛行をサポートしました。
10月8日、第2結合部(ハーモニー)から「きぼう」につながっている内部熱制御システム(Internal Thermal Control System:ITCS)の配管確認作業を行いました。この日は、伊豆諸島に接近していた台風22号をISSから撮影し、台風の状況をたくさんの人たちと共有しました。(油井宇宙飛行士 X(1)、油井宇宙飛行士 X(2))
 
  ISSから撮影された台風22号(Image by JAXA/NASA)
10月7日から8日にかけて、油井宇宙飛行士は地上のスタッフと連携して、近傍通信システム(Proximity Communication System:PROX)と関連機器が正常に作動するか確認する作業をしました。HTV-X1がISSに接近した際に、HTV-X1と無線通信をするためのシステムで、ISSの位置や速度の情報をHTV-X1へ送るとともに、HTV-X1からの情報を受け取ります。また、地上から送られてくるHTV-X1へのコマンドを中継する役割も果たします。
10月9日、油井宇宙飛行士が、ISSにやって来るHTV-X1をロボットアームで把持する担当者に任命されました。油井宇宙飛行士は「こうのとり」5号機に続き、補給機の把持担当になりました。(油井宇宙飛行士 X)
 
  カナダのロボットアーム「カナダアーム2」(Image by JAXA/NASA)
10月10日、「きぼう」エアロックと「きぼう」ロボットアームを操作して、J-SSODを小型衛星放出ポジションへ移動させました。その後、地上から操作して、衛星を放出しました。
今回は、九州工業大学と九州大学の学生が共同開発した「YOTSUBA-KULOVER」をはじめ、3機の小型衛星が放出されました。この様子は、「きぼう」次世代ハイビジョンカメラ(HDTV-EF2)で撮影され、ライブ中継されました。油井宇宙飛行士は放出の様子を写真撮影しながら見守りました。
また、11日にはJAXAきぼう利用ネットワークの投稿を引用しながら、3機の小型衛星が放出されたことについて、「衛星君達が無事にそして元気に飛び立って行った時には、嬉しいと同時にホッとしました。関係者の皆様、放出成功おめでとうございます!」と述べました。油井宇宙飛行士がJ-SSODの準備作業をしている写真も添えられています。
10月12日、油井宇宙飛行士が、ISSから撮影した種子島宇宙センターの写真をSNSに投稿しました。種子島宇宙センターでは、HTV-X1を搭載したH3ロケット7号機の打上げ準備が進められていました。HTV-X1の目的地から出発地の写真が撮影されるなんて、何だかおもしろいですね。(油井宇宙飛行士 X)
 
  ISSから撮影された種子島宇宙センターの上空(Image by JAXA/NASA)
今回のベストショットは、ISSから撮影された中秋の名月の動画です。今年は10月6日が中秋の名月でした。今年は、天気の関係で月見ができなかった人もたくさんいたことでしょう。油井宇宙飛行士は、日本の夜の時間帯に合わせてISSから月見をしました。地上から見るときとは少し見え方が違いますが、宇宙からの中秋の名月をお楽しみください。(油井宇宙飛行士 X)
皆さん、おはようございます!
— 油井 亀美也 Kimiya.Yui (@Astro_Kimiya) October 6, 2025
昨夜は十五夜のお月様をご覧になられましたでしょうか?
こちらは、皆さんが眺めていたであろう時間に撮影したお月様の動画です。
天気が悪くて中秋の名月をご覧になれなかった方はこちらで、ご覧になった方は地上と比較してみてください! pic.twitter.com/LtFJ5lzExT
今回のレポートは以上です。
次回は11月中旬を予定しています。どうぞお楽しみに!
※本文中の日時は全て日本時間
