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油井宇宙飛行士 軌道上活動レポート Vol.3(9/1〜9/14)
油井亀美也宇宙飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在ミッションを開始して約1か月が経過しました。宇宙実験を着々と進めています。
今回は、9月1日から14日までの活動の一部を紹介します。
9月2日、「火災安全性向上に向けた固体材料の燃焼現象に対する重力影響の評価(Fundamental Research on International Standard of Fire Safety in Space -base for safety of future manned mission: FLARE)」実験のために、固体燃焼実験装置(Solid Combustion Experiment Module:SCEM)で使用するガスボトルユニットを交換しました。
9月3日、米国のジョニー・キム宇宙飛行士が骨細胞の実験をするために試料の処理を行いました。油井宇宙飛行士は実験装置の準備を担当し、キム宇宙飛行士をサポートしました。
9月4日、細胞培養装置(Cell Biology Experiment Facility:CBEF)などに使用されている吸湿カセットの交換、ISSの水試料から有害物質を分析する装置の試験、将来の宇宙探査にむけた高性能な小型運動機器のテスト中の運動装置の点検も行い、実験装置の保全作業をおこないました。
9月5日、FLARE実験の終了後、SCEMのガスボトル配管を閉じる作業を実施しました。また、アマチュア無線を通じてエチオピアの子どもたちと交流し、気分転換にもなったようです。(油井宇宙飛行士 X)
9月7日、ISSから見える冬の南半球の景色をSNSに投稿しました。今年の日本は暑い日が続いていますが、涼しい場所の風景を見て、涼しさを感じていただけたら嬉しいです。(油井宇宙飛行士 X)

ISSから撮影された冬の南半球の景色(Image by JAXA/NASA)
9月8日、CBEFで培養していた「宇宙環境が植物の細胞分裂に与える影響の解明(Effects of space environments on cell division in plants: Plant Cell Division)」に関する実験試料の化学固定処理を行い、冷凍・冷蔵庫(Minus Eighty degree Celsius Laboratory Freezer for ISS:MELFI)に収納しました。
また、JEM船内可搬型ビデオカメラシステム実証2号機(Int-Ball2)の技術実証プラットフォーム化のための試験が実施され、油井宇宙飛行士はInt-Ball2の飛行をサポートしました。さらに、シグナス補給船運用23号機(NG-23)の到着に備え、「きぼう」内の物品整理やFLARE実験の準備としてSCEMガスボトル配管のバルブを開けるなどの作業も行いました。
9月8日1時27分から4時57分にかけて皆既月食が観測されました。今回は日本全国で月食が見られたので、地上から観測した人も多かったのではないでしょうか。油井宇宙飛行士もISSから天体ショーを楽しみました。(油井宇宙飛行士 X)

ISSから撮影された月食(Image by JAXA/NASA)
9月9日、「きぼう」エアロックのスライドテーブルに親アーム先端取付型実験アダプタ(Multi-Purpose Experiment Platform:MPEP)と小型衛星放出機構(JEM Small Satellite Orbital Deployer: J-SSOD)を取り付けました。油井宇宙飛行士はJ-SSODに小型衛星を設置しています。MPEPはロボットアームに複数の実験装置を取り付けるためのアダプタです。このMPEPに実験装置を取り付け船外に出した後、ロボットアームでMPEPをつかんで実験装置などを指定の方向に向けることができます。
さらに、前日から実施していたFLARE実験を終了し、SCEMガスボトル配管のバルブを閉めました。
9月11日、MPEPに取り付けたJ-SSODの動作確認を行った後、J-SSODに多層断熱材(Multi Layer Insulation:MLI)のカバーをかけました。MLIは太陽光の熱から電子機器などを保護するためのものです。

J-SSOD放出ミッションに向け船内取付け作業を行う油井宇宙飛行士(Image by JAXA/NASA)
また、兵庫県多可町の子どもたちとアマチュア無線で交信しました。日本の子どもたちとの交流で、元気をもらったようです。(油井宇宙飛行士 X)

ISSからアマチュア無線で交信する油井宇宙飛行士(Image by JAXA/NASA)
さらに、南米上空から撮影した写真とともに、熱帯雨林の消失を懸念する投稿も行いました。(油井宇宙飛行士 X)

ISSから撮影されたアマゾン熱帯雨林(Image by JAXA/NASA)
そして翌12日には、油井宇宙飛行士のX投稿を受けてJAXA第一部門のサテライトナビゲーターのXアカウントが、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)による1996年と2020年の撮影画像を比較し、森林伐採が進んでいることを示しました。
9月14日2時23分、ロシアのプログレスMS-32補給船(93P)がISSにドッキングしました。93Pは、食料、燃料、実験試料など、約3トンもの物資をISSまで運んでいます。これから6か月ほどISSに係留されます。
今回のベストショットは、油井宇宙飛行士が9月14日にSNSに投稿した「きぼう」と天の川がコラボレーションした写真です。この写真は93PのドッキングのためにISSの姿勢が変更されたことで撮影できた奇跡のショットです。珍しい風景をお楽しみください。(油井宇宙飛行士 X)

ISSから撮影された「きぼう」と天の川(Image by JAXA/NASA)
今回のレポートは以上です。
次回は10月初旬を予定しています。どうぞお楽しみに!
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