Report & News大西宇宙飛行士の活動レポート&ニュース

大西宇宙飛行士 軌道上活動レポート Vol.9(6/30〜7/13)

国際宇宙ステーション(ISS)には、ときおり地上からの物資を運ぶ無人補給船がやってきます。この期間では、その受け入れ準備などが行われました。また、大阪・関西万博の会場で開かれたイベントに大西卓哉宇宙飛行士が宇宙から参加しました。

それでは、この期間で行われた大西卓哉宇宙飛行士の活動の一部を紹介します。

6月30日、ISSと首相公邸特設スタジオをつないだ交信イベントを実施。大西宇宙飛行士は石破茂内閣総理大臣、あべ俊子文部科学大臣、城内実内閣府特命担当大臣(宇宙政策)、北海道大学の藤田修教授及び大学院生と交信しました。

首相公邸特設スタジオの様子(image by JAXA)

さらに、地上と連携して、前日まで起動してデータを取得していた近傍通信システム(Proximity Communication System: PROX)を遮断しました。PROXは、ISSに接近した補給船と無線通信するためのシステムで、新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」の接近時に使用されます。

7月2日、「きぼう」で使用しているビデオカメラシステムの調整を行い、ドラゴン補給船運用33号機(SpX-33)の到着に備え、「きぼう」内の物品を整理しました。さらに、大西宇宙飛行士と地上スタッフが連携して、「きぼう」ロボットアームの操作機器(コンソール)の機能確認をしました。

「きぼう」ロボットアーム(JEMRMS)操作卓のチェックを行う大西宇宙飛行士(Image by JAXA/NASA)

7月4日、「微⼩重⼒下におけるシリコンゲルマニウム結晶育成の研究(Study of SiGe crystals: Hicari-II)」で使用したカートリッジから、試料の搭載されている部分を取り外し、クルードラゴン宇宙船運用10号機(Crew-10)で地上に持ち帰る準備をしました。この実験によって得られたデータは地上で解析され、シリコンゲルマニウム(SiGa)結晶製造速度の超高速化を実現するために活用されます。

Hicari-IIからシリコンゲルマニウムの結晶サンプルを取り外す大西宇宙飛行士(image by JAXA/NASA)

大西宇宙飛行士はこの作業について、翌日、SNSに投稿しました。

「温度勾配炉からHicari-II実験サンプルを取り外しました。私の乗るドラゴン宇宙船で一緒に地上に帰還するみたいです。
右手で持ってる部分にシリコンゲルマニウムの結晶サンプルが入ってます。
様々な用途での活用が期待されている、高品質で大型SiGe結晶の高速育成を可能にすることが本実験の目的です」大西宇宙飛行士X(Twitter)

4日は「きぼう」エアロックのスライドテーブルから、ロボットアームの子アーム(Small Fine Arm: SFA)を取り付ける機構(SFA Attachment Mechanism: SAM)を取り外す作業もしました。この子アームに関する作業としては、大西宇宙飛行士が地上運用管制チームとやり取りしている臨場感あふれる映像を公開していますので、こちらもぜひご覧ください。

大西宇宙飛行士はこの作業についても、5日にSNSで説明しています。

「昨日は他にも、先日の子アームの搬出時に使ったアダプターが船外からエアロックに帰ってきていたのを、船内に収納しました。エアロックの扉を開けると、いつも金属が焦げたような「宇宙のにおい」がします。
次の運用までしばらく時間が空くので、私が担当するエアロック作業は今回が最後みたいです🥺」大西宇宙飛行士X(Twitter)

エアロック作業を行う大西宇宙飛行士(image by JAXA/NASA)

7月8日、大阪・関西万博会場でのリアルタイム交信イベントや「宇宙環境が植物の細胞分裂に与える影響の解明(Effects of space environments on cell division in plants: Plant Cell Division)」実験の実施に向けた準備作業を行いました。Plant Cell Division実験は、植物細胞の分裂に、微小重力がどのような影響を与えているのかを明らかにする実験です。

7月9日、大阪・関西万博会場でのリアルタイム交信イベントに向けて、リハーサルを実施しました。

7月10日、大阪・関西万博にて実施された「KIBO SPACE LIVE in EXPO2025 - 宇宙と万博がつながる日」の第3部に大西宇宙飛行士がISSから出演しました。大西宇宙飛行士は万博会場の参加者と一緒にウェーブをつくったり、日英の高校生の質問に答えたりして、たくさんの人たちとの交流を楽しみました。

翌日、大西宇宙飛行士は自撮り写真とともに、イベント出演についてSNSに投稿しました。

「万博イベントに足を運んでくださった方々、配信をご覧くださった方々、そして実現に向けてご尽力くださった全ての関係者方々に感謝いたします。
貴重な機会をありがとうございました!
私の出番の最後に撮った自撮り写真です。
日本はあいにく曇り空でしたが、会場の熱気はISSまで伝わってきました。」大西宇宙飛行士X(Twitter)

万博イベント会場の方々と自撮りする大西宇宙飛行士(image by JAXA/NASA)

「KIBO SPACE LIVE in EXPO2025 - 宇宙と万博がつながる日」の開催結果はイベントのWebページをご覧ください。

10日は、Plant Cell Division実験の準備として、細胞培養装置(Cell Biology Experiment Facility: CBEF)のサンプルトレーに植物実験ユニット(Plant Experiment Unit: PEU)を設置し、PEUの機能確認もしました。

7月11日、ライブイメージングシステム(Confocal Space Microscopy: COSMIC)で使用されていたビデオ信号変換器(VGA NTSC Converter)を取り外し、収納しました。また、HTV-X 1号機を迎える準備として、「きぼう」ロボットアームのバックアップディスクシステム(Backup Drive System: BDS)の確認作業も行いました。BDSは、トラブルによって「きぼう」ロボットアームのコンソールが使用できなくなったときに、ロボットアームを安全な状態に戻すために使用する予備の駆動システムです。

今回のレポートは以上です。
次回は7月末頃を予定しています。

※本文中の日時は全て日本時間

JAXA 有人宇宙技術部門 Humans in Space人類の
未知への挑戦を。

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