万博初の宇宙ライブイベント「KIBO SPACE LIVE」が開催され、ISSに滞在中の大西宇宙飛行士が生出演しました!
7月10日に、国際宇宙ステーション(ISS)と大阪・関西万博EXPOホールをリアルタイムにつなぐ、史上初の宇宙ライブイベント「KIBO SPACE LIVE IN EXPO 2025 -宇宙と万博がつながる日- 」が開催されました。イベントは第一部から第三部まで大きく3ブロックに分けて行われ、第一部、二部にはISSの船外カメラで撮影した美しい地球の映像を会場に届けました。第三部には、地球の映像に加え、船長としてISSに滞在中のJAXA大西卓哉宇宙飛行士が生出演。宇宙から会場の皆さんとリアルタイムにやり取りしました。ここでは、イベント第三部の内容をレポートします。

第三部オープニング ー会場と宇宙がリアルタイムでつながるー
「KIBO SPACE LIVE」第三部が幕を開け、MCの豊原謙二郎さん、声優の佐倉綾音さん、タレントの朝日奈央さんがステージに登場。いよいよ万博史上初めて、地球上の会場と宇宙空間がリアルタイムでつながるという歴史的瞬間を迎えます。会場の熱気が高まる中、ステージ上部のスクリーンに現れたのは、地上から約400km上空を時速約2万8000km(マッハ23)という驚異的なスピードで移動するISSからのライブ映像。その圧倒的なスケールに会場からはどよめきが起こりました。

宇宙への修学旅行を夢見る高校生によるISSの解説
この興奮の中、未来の「宇宙修学旅行」を目指す、福岡県の柳川高等学校の生徒3名が登場。彼らは自ら制作した映像を交えながら、ISSの規模や速度について分かりやすく解説し、「きぼう」日本実験棟が微小重力環境での研究拠点であることを説明しました。また、ISSが2030年に退役し、地球低軌道の宇宙ステーション運営が民間へ移行することにも言及し、「皆さんが宇宙へ修学旅行に行くのも夢じゃないと思います」と、会場の子供たちに大きな夢を与えました。そして、国境のない宇宙を漂うISSは、まさに平和の象徴であり、生徒たちはこのISSを通して世界が平和になることを願っていると力強く締めくくりました。


ISSが通過する時間・方角・軌道が分かるきぼう予報の紹介
地上から約400km上空を驚異的なスピードで移動しているISSですが、天候とISSの地球周回軌道の条件が揃えば、地上からも肉眼で見ることができます。イベント当日の大阪の天候は雨で、雷警報も出ていたことから、実際に屋外に出て、ISSが万博会場の上空を通過する瞬間を撮影・中継する、という企画は中止になってしまいましたが、地上から肉眼で見る際に役立つ「#きぼうを見よう」のWebサイトときぼう予報の機能が紹介され、ISSが見える日時と方角だけでなく、スマホを空にかざすと通過するISSの軌道がARで分かることが伝えられました。

星出彰彦宇宙飛行士×トマ・ペスケ宇宙飛行士のトークセッション
続いて、特別ゲストとして欧州宇宙機関(ESA)のトマ・ペスケ宇宙飛行士と、JAXAの星出彰彦宇宙飛行士が登場。宇宙から捉えた風景写真を披露しながら、トークセッションを繰り広げました。神秘的なオーロラの写真では、地上から見上げるオーロラとは異なり、宇宙からは上空から眺めることができ、時にはその壮大な光のカーテンの中を通ることがあると説明。星出宇宙飛行士はそれを「魔法みたいな体験」と語りました。また、宇宙から撮影された大阪の夜景の写真も披露され、星出宇宙飛行士は「やっぱり、宇宙からは自分の故郷を見たくなる。光の密度で“人が生きている”感じが伝わってくる」と当時を振り返りました。トマ宇宙飛行士が撮影したナミブ砂漠の写真では、一見、人の爪痕のように見える部分が実は巨大な砂丘で、宇宙からは赤だけでなく、紫、黒、ピンクなど多様な色に見えることが紹介されました。両宇宙飛行士は、宇宙から見た地球は非常に小さく、とても脆く見え、薄い大気の層に生命が包まれているように感じると述べ、かけがえのない地球を「今後もしっかり守っていきたい」という強い決意を表明しました。



第三部メインプログラム ー大西宇宙飛行士が「きぼう」から生出演ー
ISS日本上空通過の瞬間を会場の皆さんと一緒に
第三部のメインプログラム、大西宇宙飛行士とのリアルタイム交信は、会場からの「大西さーん!」の呼びかけでスタート。前方の大型スクリーンに、「きぼう」日本実験棟にいる大西卓哉宇宙飛行士が登場すると、会場からは歓声が上がりました。大西宇宙飛行士は、観客の皆さんに笑顔で挨拶し、自身も中継で日本上空の景色を見られることを「とっても楽しみにしています」と、そのワクワクした気持ちを伝えました。映像には約6秒の遅延がありながらも、空中にフワフワと浮く大西宇宙飛行士の姿や、タブレットを空中でクルッと回転させる様子は、今まさに宇宙にいる人物とつながっているということを実感させ、会場は興奮に包まれました。

ISSが日本上空を通過するまで、あと2分程度。ISSのカメラが捉える地球の姿が刻々と変化します。台湾上空から台北、那覇、上海、熊本、福岡、広島、大阪と時速約2万8000km(マッハ23)という想像を絶するスピードで日本列島を通過する様子は、観客を驚かせました。大阪を通過すると、大西飛行士は、厚い雲が見える中でも「心の目で万博会場が見えました」と優しく語りかけ、会場の喜びを誘いました。また、地上からISSまでの約400kmという距離は、東京から大阪ほどの距離であることに触れ、宇宙が意外と身近な存在であることを伝えると、観客はそのスケール感に改めて驚いた様子でした。

「KIBO ウェーブ」で会場からISSまでが一体化
続いて行われたのは、会場の観客の皆さんとISSの大西宇宙飛行士が連携して行った「KIBOウェーブ」。このチャレンジは、イベントの中でも特に熱気を帯びた瞬間になりました。MCが「宇宙に届くような声で」と呼びかけると、客席の左側から右側へとウェーブが作られ、その様子はISSにもリアルタイムで中継されました。大西飛行士も無重力の中でフワリと身を浮かせ、楽しそうにウェーブに参加。その見事な連携と成功に、会場からは割れんばかりの拍手が送られました。MCは「皆さんのご協力で今、国際宇宙ステーションにまで続く大きな希望のウェーブが誕生いたしました!」と感動的に語り、会場に大きな達成感と喜びが広がりました。

日本とイギリスの高校生の願い、大西宇宙飛行士の5年後の願い
ウェーブチャレンジの後は、日本(大分県立国東高校)とイギリス(Richard Lander School)の高校生たちと、ISSの大西宇宙飛行士とが多地点中継でつながりました。まずは国東高校の生徒が、地元のスペースポート(宇宙港)から宇宙へ行きたいという夢を語り、医療分野で人を救うことを目指しているとして、宇宙医学に関する質問を投げかけました。大西飛行士は「素敵な夢と質問をありがとう」と感謝を述べ、宇宙医学の重要性や、前職が医師である先輩宇宙飛行士の例を挙げながら、「この先、私もご一緒に仕事できるのを楽しみにしています」と温かい言葉で高校生の夢を後押ししました。Richard Lander Schoolの生徒からの宇宙飛行士になる夢のきっかけに関する質問には、幼少期からの夢であり、多くの本やSF映画からインスピレーションを受けたと明かし、「将来、より多くの人が宇宙へ行けるようになり、皆さんの住む街が夢を目指す場所となることを願っています」と、未来への希望を込めて語りました。
そして、大西宇宙飛行士自身の5年後の願いとしては、2030年に退役予定のISSを、この5年の間に「きぼう」を含めて最後までとことん使い尽くし、その役割を全うすること、さらに「民間宇宙ステーション」や「月や火星を目指す国際宇宙探査」といった次の宇宙開発へとしっかりとバトンをつないでいくことを挙げました。さらに、アポロ世代から受け継がれた宇宙開発のバトンを、万博会場にいる子供たちや青少年たちの世代へしっかりとつなぎたいという強い使命感と未来への思いを語りました。

「ほしのおと」プロジェクトのチャリティソングを披露
プログラムの終盤では、2030年に退役するISSの記録を音に残す「ほしのおとプロジェクト」の一環として、「作詞・作曲、地球」というユニークなコンセプトのチャリティソングが披露されました。ライブパフォーマンスには、合唱音楽の第一人者・松本耕さん率いる合唱チームや、グラミー受賞チェリストのエル・マツモトさんの他、大西宇宙飛行士も参加。大西宇宙飛行士は、曲の冒頭で「この青い星を見ていると、お母さんとへその緒でつながった赤ん坊のように、自分はこの星の一部なのだと感じます。その絆は、この先人類がもっともっと遠くを目指すようになっても、きっと変わらないと思います」とメッセージを読み上げました。パフォーマンス後、大西宇宙飛行士は「もうめちゃくちゃ感動しました」と率直な感想を述べ、続けて「僕が今いるこの国際宇宙ステーションというのは、ずっと周りを機械に囲まれていて、24時間365日絶え間なく機械が動いている音に囲まれているのですが、そんな中で、人が奏でる音色というものが本当に素晴らしく心に染みました」と、宇宙という特殊な環境で、生きた音楽がもたらす特別な感動を語りました。会場の観客もその言葉に共感し、改めて大きな拍手が送られました。

第三部エンディング ー国際社会が共創する未来に向けてー
大西宇宙飛行士の自撮りによる記念撮影
イベントのクライマックスのひとつとして、大西宇宙飛行士による「宇宙スケールの自撮り」が行われました。大西宇宙飛行士はタブレットを使い、ISSにいる自身と、会場の観客、ステージ上のゲストが映るモニターを同時に撮影するというユニークな試みに挑戦。MCが「カメラマンは宇宙の大西宇宙飛行士です!」と紹介すると、会場からは期待と歓声が上がりました。「3、2、1、きぼう!」のカウントダウンと共にシャッターが切られ、通信の遅延があるため観客はしばらくポーズを維持しました。見事、撮影が成功すると、会場からは大きな拍手と喜びの声が湧き上がりました。大西飛行士は「後日X(旧Twitter)で使わせていただければと思います。楽しみにしてください」と語り、この特別な瞬間の共有を約束しました。


イベント終了時の大西宇宙飛行士からの挨拶
イベントの締めくくりに大西宇宙飛行士は、万博が世界中のたくさんの国の方々が集まる場所であり、自身が働くISSもまた国際協力の象徴的な例であることに触れ、この万博の場に参加できたことを「本当に心から嬉しく思っています」と、感謝と充実感を滲ませました。大西宇宙飛行士は、今回のイベントで「僕もいろんな刺激を皆さんからいただきました」と語り、残りのISS滞在期間も「引き続き頑張りたいと思います。ぜひ応援してください」と、未来への意欲を力強く表明しました。会場の観客も大きな拍手でその言葉に応え、未来への希望に満ちた雰囲気の中、イベントは幕を閉じました。

イベントの様子は、イベント主催者であるKIBO宇宙放送局のYouTubeチャンネルにアーカイブがありますので、ぜひご覧ください。
KIBO SPACE LIVE in EXPO2025 - 宇宙と万博がつながる日(YouTube:9時間08分04秒)
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