若田宇宙飛行士、日本メディア向け帰還後記者会見
4月5日午前9時より、現在米国ヒューストンでリハビリ中の若田宇宙飛行士が、地球帰還後初となる日本メディア向けの記者会見に臨みました!
若田宇宙飛行士冒頭の挨拶(抜粋/要約)
「今日は多くの皆さんにご参加いただきましてありがとうございます。3月12日に157日間のISS長期滞在から無事に帰還しました。様々な実験やシステム運用の作業を多くの仲間、それから地上管制局の皆さんとの連携で確実に進めることができたと思います。地球への帰還が迫った2月末から3月初めにかけて、「きぼう」日本実験棟で4回目の次世代水再生実証システムの初期検証を担当しました。今回水再生の全ての工程を実施することに初めて成功し、地上の筑波の水再生チームと成功を喜び合うことが出来ました。そして、ISS滞在中には新たなJAXAの宇宙飛行士候補者の仲間である諏訪理さん、米田あゆさんが誕生したことをとても嬉しく感じています。彼らの訓練や宇宙飛行をサポートしていきたいと思っています」
質疑応答(一部)
今回、2回船外活動(EVA)をされましたが、活動をする中で体調面は問題なかったですか。また、船外活動に向けて気をつけたことはありましたか。
「軌道上ではEVAをするしないに関わらず、約2時間の運動時間というのがスケジュールの中に入っており、今回もきちんと行っていました。特に船外活動の場合は、手の動きで疲労が溜まりますので、握力やリストのトレーニングはきちんと船外活動に向けて行いました。特に船外活動の場合は、手の動きで疲労が溜まりますので、握力の訓練やリストのトレーニングはきちんと船外活動に向けて行いました。そういった毎日の運動の成果があって、船外活動では特に問題なく動くことができたと思います。船外活動よりプールの訓練の時の方が大変で、船外活動の方が楽だなと感じました」
今後、どのように活動していこうとお考えですか。
「現時点では、今後どう具体的に業務を担当していくのか考えているところですが、日本の宇宙活動の発展に寄与したいという思いを強く持っています。国際宇宙探査計画のゲートウェイプログラムの中でJAXAも新しいモジュールやシステムの開発、月面ミッションに向けた研究開発を進めています。そういったところも含めて、JAXAの宇宙飛行士の今後のフライト支援など、有人宇宙活動全体に寄与するために、これまで私が経験したことを活かして行きたいと強く思っています」
4日0時(日本時間)にアルテミスIIのクルーの発表がありましたが、その発表を聞き、どのように思いましたか。
「今回の発表の現場に星出宇宙飛行士と一緒に立ち会わせていただき、月有人探査が本格的に開始される時代になったことを強く感じました。同時に、地球低軌道では商業活動を含めた有人宇宙活動が目まぐるしいスピードで活発化していることも実感しています。有人宇宙活動が地球低軌道からその先の月・火星へと大きく飛躍する時代に入ったことを実感する瞬間でした」
今回、民間のアイデアから生まれた生活用品など利用されました。使われての感想などを聞かせてください。
「今回、初めてISSに搭載された宇宙生活用品をいくつも軌道上で使わせていただきました。ほとんどが、宇宙に持って行ってよかったと思うものばかりでした。日本の民間企業の皆さんがいろいろなアイデアを出してこういった製品を作ってくださったことに、まず感謝します」
次世代の水再生装置の全行程を実験されたということについて詳しくお伺いしたいです。尿から飲料水までの一連の流れを全て軌道上でやったということなのですか。
「実際の尿ではなく、模擬尿から一連のループを回して水再生の全工程を行いました。私の滞在中にはそれを飲むということまでは含まれていませんでしたが、模擬尿からそれを水再生して飲める状態まで再生するという一連のループを今回初めて実証できました」
今回、新たに宇宙飛行士候補者が2人選ばれましたが、2人に対してアドバイスなどありますか。
「諏訪さん、米田さんと、素晴らしい資質を持った宇宙飛行士候補者ですので、今後、日本の有人宇宙活動を進めていく中で、国際宇宙探査の中で日本人としてなすべきことをきちんと見極めて、世界、そして日本の有人宇宙活動に貢献するための強みを磨いてほしいなと思っています。世界の有人宇宙活動の最先端を見て学んでいただいて、そういう経験をもとに自らの資質・能力を高めてほしいと思います」
今回の宇宙滞在を振り返ってみて、印象的だった出来事や、もしくはISSや船外から見て印象的だった風景を教えてください。
「私はこれまで宇宙飛行を5回経験しましたが、その中で最もトラブルが多かったミッションだったのかなと思います。宇宙船の冷却システムのリーク含めて、様々なトラブルがありましたが、タイムリーに世界各国の運用管制局チームが協力し、克服するための努力をして、チームワークで乗り切ったと思います。船外活動の時にも太陽電池パネルの架台を取り付けるために事前にブレインストーミングをして臨んだのですが、それでもツールが壊れたり、地上管制局の皆さんが考えた手法が全く通用しないといったトラブルに遭遇しました。でも、地上管制局とクルーが協力して、アイデアを出し合ってトラブルを解決しました。トラブルを解決するための、アイデア、チームワークなどの力強さを感じたミッションだったと思います。そして、初日の出の光景、美しいオーロラ、宇宙ステーションなどが、私にとって特に印象に残っている光景でした」
若田宇宙飛行士会見終了の挨拶(抜粋/要約)
「今日は本当に皆様ありがとうございました。今回のISS長期滞在ミッション、その訓練、それから実際の飛行での経験を、新しい2名の候補者も含めて仲間の宇宙飛行士と共有して、今年ISS長期滞在ミッションに臨む古川宇宙飛行士の訓練、ミッション運用を支援し、日本の有人宇宙活動のさらなる発展に寄与していきたいと思っています。 改めて今回のISS長期滞在ミッションの実施にあたり、ご支援いただいた皆様に感謝申し上げます。今後とも、日本の有人宇宙活動のさらなる発展に向けて応援をいただければと思います。よろしくお願いいたします」
若田宇宙飛行士のISS滞在中の成果については、こちらでご覧いただけます。
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