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大西宇宙飛行士らCrew-10クルー帰還後記者会見

8月21日午前5時00分頃(日本時間)より、大西宇宙飛行士らCrew-10クルーが、国際宇宙ステーション(ISS)からの帰還後初となる記者会見に臨みました。SNSからの投稿も含め、メディアから多くの質問が寄せられました。

記者会見で、大西宇宙飛行士は、ISSで取り組んだミッションやその成果、ISS船長を務めた感想、地球に帰還した時の印象など、想いを馳せながら語りました。

Crew-10クルーが記者会見に臨む様子(Image by JAXA/NASA)

大西宇宙飛行士の質疑応答(一部)

ー将来、月や火星への長期的な宇宙飛行を見据えて行なった、国際宇宙ステーション(ISS)での研究について教えてください。

「ISSでの宇宙医療に関する研究は、月や火星などに到達するために役立つと考えています。例えば、私は「Zero T2」という実験に参加しました。 T2というのは、ISSに搭載されているトレッドミル(ランニングマシン)のことです。滞在中の5か月間、まったく走ることはありませんでした。そして、地球に帰還した際、自分の身体が重力にどう反応し、どう順応していくのかという過程を経験しました。このような適応プロセスを通して得られるデータは、将来のクルーにとって非常に有益なものになると思います。」

ー多くの実験を行ったと思いますが、その中で特に心に残った、あるいはご自身にとって最も意味のあった実験を教えてください。

「特に気に入っている実験の1つは、「静電浮遊炉 (ELF)」です。理由は3つあります。1つ目は、日本の実験であること。2つ目は、私は大学で物質工学を専攻していたので、自分の専門分野と関係があったからです。

そして3つ目は、私の初飛行は2016年だったのですが、そのときにこの実験の最初の初期チェックアウトに関わりました。それ以来、大小さまざまなアップグレードを経て、この実験装置は稼働を続けています。今回のミッションで再びこの実験に取り組むのをとても楽しみにしていましたし、静電気の力を使って試料を浮かすことができるのは、とても興味深いことです。

通常の炉のように重い金属製の容器を使わず、レーザーで試料を加熱し、2,000〜3,000度の高温まで到達させることができます。なので、そのような高温環境下での物質の特性データを取得できます。この実験は、地上で新しい素材を開発する上でも非常に有益になると思います。」

質問に答える大西宇宙飛行士(Image by JAXA/NASA)

ー今後の長期に渡る宇宙飛行において、絶対に必要だと感じる装備や機材は何だと思いますか?

「地球とのネットワーク通信が、宇宙飛行士にとって心理的なサポートの面で、とても重要だと思います。一回目と比べての大きな違いは、ネットワーク接続だと思います。今回は良好なインターネット接続が確保されており、友人や家族といつでも簡単にコミュニケーションができました。このことは精神衛生上非常に大きいと感じました。

月や火星へ向かうとなると、地球からさらに離れることになるので、そうした孤立感が大きな課題となるでしょう。そのため、通信手段の確保や接続性の維持は、探査ミッションをより円滑に進めるために極めて重要であると考えています。」

ーISS滞在中に、予想していなかった学びは何かありますか?

「ISS船長を務めたことが、まったく新しい経験でした。国際色豊かなチームを指揮するような立場になったことは本当に貴重な体験でした。メンバーそれぞれが異なるスキルや文化を持っており、その違いを見るのはとても興味深かったです。そのような国際チームのリーダーとしての役割を担うことができたのは、大変貴重なものでした。

将来、私たちがどこかへ向かうにせよ、それは確実に国際的な協力によって実現するものです。今回の経験は、また同じような機会があるときに必ず役に立つと思います。このような機会を与えていただいたことに心から感謝しています。」

ー地球に戻ってきたときはどのような気持ちでしたか?また、メキシコ湾ではなく太平洋に着水して、どのような印象でしたか?

「着水後、波に揺られて体調が崩れないか心配していましたが、特に問題ありませんでした。むしろ、すべてのプロセスが素早く計画通りに進んでいったので、とても信頼のできるシステムだと思いました。

着水自体は、ソユーズでの着陸と同じくらいの衝撃がありましたが、それも含めて楽しい経験でした。パラシュートが開く瞬間や、着水の瞬間など、どれもワクワクして、船内でもクルーとたくさん話をしながら盛り上がっていました。」

着水時の印象について語る大西宇宙飛行士(Image by JAXA/NASA)

長期滞在を共にしたクルーと笑顔でISS活動の体験を共有し合った大西宇宙飛行士。ISS船長として国際色豊かなチームを率いて、クルー全員で信頼し合いながら様々なミッションに挑戦できた素敵なチームであったことが伝わってきました。

帰還に関するレポートは以下のトピックスで振り返ることができます。

クルーメンバーの話を聞きながら笑顔を浮かべる大西宇宙飛行士(Image by JAXA/NASA)

※本文中の日時は全て日本時間

JAXA 有人宇宙技術部門 Humans in Space人類の
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