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JAXA古川聡宇宙飛行士の国際宇宙ステーションからの軌道上記者会見

記者会見に臨む古川宇宙飛行士(Image by JAXA)

2月20日夜、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟において、古川聡宇宙飛行士の軌道上記者会見を行いました。

古川宇宙飛行士冒頭の挨拶(抜粋/要約)

皆様、お忙しい中お集まりくださりありがとうございます。本日2月20日で今回の宇宙滞在が178日になり、前回の167日を越えました。この間、軌道上の仲間そして地上の仲間と連携して、チームワークで仕事を確実に実施してきました。今回、私は「宇宙でしか見つけられない答えが、あるから。」というキーメッセージのもと、3つの柱で仕事をしてきました。

1つ目の柱は、長時間安定して続く微小重力という宇宙特有の環境を利用して、地上の生活をよりよくすることです。例えば、細胞の重力感知の仕組みを調べる「Cell Gravisensing」実験を実施しました。これはサンプルが持ち帰られ、現在解析中と聞いています。また、新薬の開発促進に繋がる高品質タンパク質結晶生成実験も行いました。さらに、微小重力環境を活用した立体臓器創出技術の開発「Space Organogenesis」に関しては、今後実施される実験に向けて、自動溶液交換装置の設置及び機能確認などを地上と連携して行いました。

2つ目の柱は、ISSや「きぼう」をテストベッドとした今後の月探査に向けた技術実証です。例として、星出・若田両宇宙飛行士から引き継いで長期間行ってきた次世代水再生実証システムの実証実験について、水のサンプルを採取し締めくくることができました。また船内ドローンの「Int-Ball2」は1号機から発展させ2号機で初めて「充電ポートとの自動ドッキング・リリース技術」を実現することができ、宇宙飛行士の撮影作業軽減に向け進んでいることを感じています。さらに、火災安全性向上に向けた固体材料の燃焼現象に対する重力影響の評価「FLARE」の実験では、実験装置の設置、機能確認を地上と連携して実施しました。

3つ目の柱は、産業界の皆様の参加を促進することです。例としては、「きぼう」のエアロックとロボットアームを使用した超小型衛星の放出において、民間の事業者サービスの2つの衛星を放出しました。

今回の宇宙滞在を通じて「きぼう」を活用した実験の着実な遂行、そして将来の国際宇宙探査に向けた実験や実証をしっかりと行っていくこと、それを常に心に置いて仕事をしてきました。また、ISSや「きぼう」での活動について、小学生から社会人まで、多くの方々と交信イベントなどの機会を持てたことにも感謝しています。

今回、私が搭乗したクルードラゴン宇宙船運用7号機(Crew-7)は、すべてのメンバーがそれぞれ違う国から来ていて、国際色が豊かでした。それぞれの国の宇宙食を持ち寄って食べたりして、仕事だけでなく生活の面でもとても楽しい充実した半年間となりました。

今後も「きぼう」日本実験棟が持つ機能を最大限に活用し、多くの産業界や研究者の皆様にも参画頂き、持続可能な社会に貢献し、今後、月、その先へと人類の活動圏を広げ、人類の新たな発見と発展に寄与することが重要だと考えています。地球への帰還までのラストスパート。しっかりと着実に仕事をしていきたいと思います。そして、2025年頃の国際宇宙ステーション搭乗に向け、油井宇宙飛行士、大西宇宙飛行士が訓練をしている中、しっかりとバトンをつないでいきたいと思います。

質疑応答(一部)

—今回のミッションに対する名残惜しさや残りの日数をどう過ごしたいかお聞かせ下さい。

名残惜しいという点は、まさにご指摘の通りで、宇宙で生活して仕事することにすっかり適応しているので、もし許されるならばもっと滞在して仕事を続けたいくらいです。このような時間を英語では「bitter sweet moment」と呼ぶようです。ただ、今回の宇宙滞在は出張なので、残りの仕事をしっかりと行っていきたいです。次のクルーが到着した後は引き継ぎをしっかりとして、気持ちを切り替えて帰還したいと思います。着水による帰還は私にとって初めてなので、楽しみです。

—今回の長期滞在中で印象深い思い出や経験があれば紹介して下さい。

トルコ初の宇宙飛行士を含むアクシオムスペース社主導によるクルー4人を国際宇宙ステーションでお迎えでき、忙しくも、にぎやかでとても楽しい2週間半を過ごせたことは、とても嬉しいことでした。

また、ISSで使う機器は地上で十分に実験や検証を行っているのですが、それでも微小重力環境という地上とは異なる環境で使用することで、予期せぬことが起こることがあります。例えば、ISSでは実験機器をマジックテープなどで固定しますが、スペースの制約などからそれができないときもあります。そのようなときに機器をしっかり固定して実験などの精密な作業を行うことが難しいといった課題が時々生じます。そのようなときに私には素晴らしいチームメイトが地上にいることを改めて実感させられました。そういった事象が生じた場合に、地上の専門家や仲間に報告、相談します。宇宙の現場にいる私からも提案をしたり、お互いに意見を出し合いながら課題を解決してきました。そのように地上のチームメイトと共に仕事をしたのが私の印象深い思い出です。

記者会見の様子(Image by JAXA)

—2024年の抱負の1つとして、これまでの経験を活かした宇宙ビジネスへの貢献を挙げていました。ご関心のある宇宙ビジネス分野や検討されている展望などがあれば聞かせて下さい。

年末年始に宇宙ステーションと地上をつないで民間企業主導でのイベントがありまして、私も出演して日本の皆様にご挨拶させて頂きました。「きぼう」では様々な企業のミッションが進んでいて、「きぼう」を利用する企業が少しずつ増えています。

日本の企業が宇宙でビジネスを進めることはとてもすばらしいことだと思います。もし機会があれば、宇宙環境でも企業の方が狙っていた目標をしっかりと達成できるように、微小重力環境で勤務した経験を活かして支援できたらと思います。

今回、私が宇宙との往還に使ったのが米国の民間企業スペースX社のクルードラゴンであることが象徴するように、宇宙ビジネスが進んでいます。実際、職業宇宙飛行士ではない方だけによるミッションが実現していますし、今後、ますます進んでいくでしょう。これも機会があれば、民間で宇宙飛行する人たちに対して、宇宙での体の変化やそれへの対応、体の使い方、仕事の進め方のこつなど、私の経験をお伝えできたらと思います。

—自身の体に起きた変化で一番意外だったことは何ですか。また、どうしてそれが起こったのか、古川さんのお考えがあれば教えてください。

飛行前に比べて、宇宙飛行中の私の下半身は細くなりました。ふくらはぎが約2cm、太ももが2〜3cm、ウエストが4〜5cm細くなっています。それは、微小重力環境で血液や組織液が上半身に移動する体液シフトで説明できます。

しかし、増えると予想していた胸囲が実際は減っていて、これが意外でした。私の仮説としては脳への血流、組織液が増えたことで、脳が血液、体液が過剰だと判断して、それらを減らしたものと推測しています。

下半身は血液、組織液の減少に加えて体液シフトで細くなり、胸囲は、血液、組織液の減少によって細くなったのではないかと考えています。ちなみに、宇宙での私の体重は、前回同様、3kgほど減っています。これも、血液、組織液の減少がその原因の1つではないかと推測しています。

古川宇宙飛行士会見終了の挨拶(抜粋/要約)

日本の皆様、温かい応援をくださり感謝申し上げます。これからラストスパート、しっかり着実に仕事をしていきたいと思います。それから、油井宇宙飛行士、大西宇宙飛行士、金井宇宙飛行士、そして訓練中の米田宇宙飛行士候補者、諏訪宇宙飛行士候補者に私の経験を伝え、日本人宇宙飛行士のバトンをしっかりとつなげていきたいと思います。本日はありがとうございました。

記者会見に臨む古川宇宙飛行士(Image by JAXA)

軌道上記者会見の様子は、JAXA YouTubeチャンネルにアーカイブがありますので、見逃された方はぜひご覧ください。

JAXA古川聡宇宙飛行士の国際宇宙ステーションからの軌道上記者会見

URL:https://youtu.be/UCzEGkNBwOg

※本文中の日時は全て日本時間

JAXA 有人宇宙技術部門 Humans in Space人類の
未知への挑戦を。