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古川宇宙飛行士 軌道上活動レポート Vol.9(12/18〜1/7)

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。年末から年始までの期間、宇宙実験に加えて年越しのイベントも開催され、古川宇宙飛行士は、多くの視聴者と一緒に新しい年を迎えました。それでは、年末年始の活動の一部をご紹介します。

12月18日、小型衛星放出機構(JEM Small Satellite Orbital Deployer: J-SSOD)から、「BEAK」と「Clark sat-1」の2機の超小型衛星が宇宙空間へ放出されました(J-SSOD#27)。古川宇宙飛行士はその模様を写真撮影しました。放出の様子は、JAXA公式YouTubeチャンネルで、アーカイブ配信されています。

「きぼう」から放出される超小型衛星「BEAK」(東京大学、日本大学、JAXA)(Image by JAXA/NASA)

12月19日、「微⼩重⼒環境を活⽤した⽴体臓器創出技術の開発(Development of advanced 3D organ culture system utilizing microgravity environment: Space Organogenesis )」実験第2期に向けて、実験支援系の共通ガス供給装置(Common Gas Supply Equipment: CGSE)に設置されている旧型の二酸化炭素ガスボトルユニットを取り外し、新型ガスボトルユニットを設置するためのフレームを取り付けました。新型ガスボトルユニットの設置は後日行います。これに加えて、地上から立体培養用⾃動溶液交換器具2型(T-DOCS)の動作を確認し、Space Organogenesis実験の準備を進めました。

12月20日、20℃での高品質タンパク質結晶生成の10期目の実験(Moderate Temperature Protein Crystal Growth #10: MTPCG #10)が完了し、古川宇宙飛行士は実験試料を「きぼう」搭載用ポータブル冷凍・冷蔵庫(FROST2)から取り出した実験試料を輸送用真空保冷装置に入れ変え、ドラゴン補給船運用29号機(SpX-29)に搭載しました。この日は、SpX-29への帰還物品の移動を完了、ハッチが閉じられました。

12月22日、地上から細胞培養実験ラックを起動し、Space Organogenesis実験のための機器の動作確認をしました。この日、着水予定地点の天候不良により長く延期が続いていたSpX-29がISSから離脱、また、同日夜、シグナス補給船運用19号機(NG-19)も離脱しました。

離脱されたNG-19について、古川宇宙飛行士がXで解説しています。「シグナスNG-19号機。2023年8月上旬に国際宇宙ステーションに実験機器などを運んで到着、12月22日に離脱しました。しばらくの間地球を周回してNASAのSAFFIRE実験を行った後、大気圏突入して燃えます。」(古川宇宙飛行士 X (Twitter)

古川宇宙飛行士X(Twitter)より

SAFFIRE実験(Spacecraft Fire Safety Demonstration: Saffire)とは、微小重力下における大規模な火炎の燃え広がり特性と材料の可燃限界を調べるための実験です。小規模な火炎を用いた実験は、クルーのいるISS内でも実施できますが、この実験では、大気圏突入して燃え尽きる前の補給機を使うことで、クルーに危険を及ぼす心配なく大規模な火炎の実験を行うことができます。

微小重力下で火がどのように振る舞うのか、また様々な材料上を炎がどのように伝播するのかを理解することは、将来の有人宇宙船の開発にとって非常に重要で、JAXAでは、「きぼう」内で、固体燃焼実験装置(Solid Combustion Experiment Module: SCEM)を使った、火災安全性向上に向けた固体材料の燃焼現象に対する重力影響の評価(Fundamental Research on International Standard of Fire Safety in Space -base for safety of future manned mission-: FLARE)を行っています。

FLAREに関する作業を行う古川宇宙飛行士 (Image by JAXA/NASA)

12月23日、ISSから分離したSpX-29が2時32分(日本時間)に米国フロリダ州タハラシー沖に着水しました。またこの日のISSでは、プログレスMS-24補給船(85P)のスラスタを噴射させ、ISSの高度を上げるISSリブーストが実施されました。ISSは、地球上空400㎞を周回していますが、この高度では、薄いながら大気があるため、その抵抗で次第に高度が下がっていきます。そこで、このように時々リブーストを行って高度を上げる必要があるのです。

12月25日、この日、クルーはクリスマスの休日でした。古川宇宙飛行士も他のクルーとともにクリスマスパーティーを楽しんだようです。

クリスマスを祝って記念撮影を行う古川宇宙飛行士らISS第70次長期滞在クルー (Image by JAXA/NASA)

12月26日、古川宇宙飛行士が「きぼう」エアロックのスライドテーブルに設置されていたJ-SSODを取り外しました。さらに、細胞培養装置追加実験エリア(Cell Biology Experiment Facility-Left:CBEF-L)を使用したSpace Organogenesis実験の準備とSCEMの機能確認も実施しました。

12月27日、JEM船内可搬型ビデオカメラシステム実証2号機(Internal Ball Camera2: Int-Ball2 )の自動ドッキングやリリース機能の動作確認をしました。Space Organogenesis実験の準備も引き続き進めました。

Space Organogenesis実験実施に向けて事前の確認を行う古川宇宙飛行士 (Image by JAXA/NASA)

12月28日、ソユーズMS-24宇宙船(70S)のクルーとクルードラゴン宇宙船運用7号機(Crew-7)のクルーはそれぞれ、緊急脱出訓練などをしました。ISSで緊急事態が発生した際に、適切な対応を迅速にできるようにするためのもので、ISSからの緊急脱出から地球への帰還までの手順などを確認しました。

12月31日から1月1日にかけて、KIBO宇宙放送局の宇宙スタジオミッションとして、「THE SPACE SUNRISE LIVE 2024」を実施。古川宇宙飛行士は、「きぼう」の宇宙スタジオから、たくさんの視聴者と一緒に2024年を迎えました。配信ではISSの船外カメラで撮影した宇宙から初日の出が出てくる様子や、太陽が沈み、地表が夜になっていく日の入りの様子など、貴重なシーンもリアルタイムで見ることができました。

1月5日、古川宇宙飛行士が、実験前のチェックアウトを完了したSpace Organogenesis実験の培養ユニットをCBEF-Lから取り外しました。細胞を用いた実験がこの後予定されており、立体臓器の創出に向けた基盤技術開発を目指します。

今回のレポートはここまでです。次回は1月25日(木)頃を予定しております。

次回のレポートもお楽しみに。

※本文中の日時は全て日本時間

JAXA 有人宇宙技術部門 Humans in Space人類の
未知への挑戦を。