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古川宇宙飛行士 軌道上活動レポート Vol.6(11/6〜11/19)

今回の期間中、古川宇宙飛行士は「きぼう」日本実験棟でさまざまな実験を行いました。その中心となったのが、細胞が重力を感知するしくみを探る「細胞の重力センシング機構の解明(Elucidation of gravisensingmechanism in single cells: Cell Gravisensing)」実験です。さらに、ドラゴン補給船運用29号機(SpX-29)が到着し、新たな実験の準備も進んでいます。この期間で行われた古川聡宇宙飛行士と「きぼう」日本実験棟での活動の一部を紹介します。

11月7日、JEM船内可搬型ビデオカメラシステム実証2号機(Internal Ball Camera2: Int-Ball2)の自動リリース・ドッキングの機能・性能を検証するチェックアウト作業が行われました。結果は見事成功!今後、実用化に向けて、さらなるチェックアウト作業が進められます。

ドッキングステーションに接続完了したInt-Ball2(Image by JAXA/NASA)

11月9日、Cell Gravisensing実験の準備として、細胞培養装置(Cell Biology Experiment Facility: CBEF)の微小重力培養部に加湿器を取り付け、自動溶液交換器具や実験手順の確認を行いました。

11月10日10時28分(日本時間)に、ドラゴン補給船運用29号機(SpX-29)が米国・フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられました。通常、ISSのクルーは週末はお休みとなるのですが、この週は週末にSpX-29が到着する予定のため、金曜日が振替休日となりました。

11月11日、SpX-29がISSに到着し、19時8分頃(日本時間)にドッキングしました。その後、ISSクルーがSpX-29のハッチを開け、搭載されていた物品の移動を開始しました。

11月12日、CBEFの準備、自動溶液交換器具(Automatic solution exchange system for cell culture Mark-1:Auto-Ex1)での細胞の培地交換を終え、Cell Gravisensingの培養実験がスタートしました。また、ジャスミン・モグベリ宇宙飛行士が「20℃で実施するタンパク質結晶実験(Moderate Temperature Protein Crystal Growth:MT PCG)」の実験試料を「きぼう」搭載用ポータブル冷凍・冷蔵庫(Freezer-Refrigerator Of STirling cycle 2: FROST2 )に入れ、実験が開始されました。

11月13日、古川宇宙飛行士がライブイメージングシステム(Confocal Space Microscopy: COSMIC)にCell Gravisensing実験の観察用チャンバーを設置し、地上から試料を観察しました。この日は1回目と2回目の観察が行われました。

11月14日、Cell Gravisensing実験の試料を地上に持ち帰るために、1回目と2回目の化学固定用チャンバーと、RNA(リボ核酸)試料保存用の容器を取り出し、自動溶液交換器具(Auto-Ex1)を使って、培地をそれぞれの保存液へと交換する処理をモグベリ宇宙飛行士が行いました。保存処理後の試料は地球に帰還する補給船に搭載されるまで、冷凍・冷蔵庫(Minus Eighty degree Celsius Laboratory Freezer for ISS: MELFI)で保管されます。さらに、Cell Gravisensingサンプル観察3回目の準備として、COSMICの観察用チャンバーを2回目用から3回目用に入れ替えて設置し、地上から3回目の試料観察が行われました。

さらに、この日はMELFIで長期凍結保管している「宇宙環境が精⼦幹細胞へ及ぼす影響の解析(Effect of space environment on fertility of spermatogonial stem cells: Sperm Stem Cells)」実験の試料細胞が凍結保管されている冷凍・冷蔵庫(MELFI)にSpX-29で運ばれた放射線量測定器を古川宇宙飛行士が設置しました。

11月15日、Cell Gravisensing実験の作業が続いています。古川宇宙飛行士が、化学固定用チャンバーと、RNA試料保存用のチャンバーの3回目の保存処理を行い、またCOSMICで4回目の観察が実施されました。

11月16日、古川宇宙飛行士は静電浮遊炉(Electrostatic Levitation Furnace: ELF)のガスボトルユニットを交換し、動作確認をしました。さらに、Cell Gravisensing実験のための作業を、これまでと同様の手順で行い、地上からは、COSMICで5回目と6回目の試料観察が行われました。

11月17日、Cell Gravisensing実験は、COSMICで7回目の試料観察が始まり、古川宇宙飛行士はCBEF内の片付けをしました。

11月18日、COSMICを介して地上から実施されていたCell Gravisensing実験の7回目の試料観察が終了し、COSMICに保存されていた実験データを地上へ送信しました。微⼩重⼒環境下では、細胞が微⼩重⼒を感知するにより、組織・個体レベルでの筋萎縮・⾻量減少へと繋がると考えられています。細胞の重⼒感知(感受)メカニズムの解明は、 宇宙⾶⾏⼠に起こる筋萎縮・⾻量減少、さらにはそれと似た症状を示す、地上での寝たきり状態での病態の予防・治療法の開発に繋がり、⾼齢化社会の問題に貢献することが期待されます。

Cell Gravisensing実験を行う古川宇宙飛行士 (Image by JAXA/NASA)

今回のレポートはここまでです

次回のレポートは12月7日(木)頃を予定しています。次回のレポートもお楽しみに。

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JAXA 有人宇宙技術部門 Humans in Space人類の
未知への挑戦を。