古川宇宙飛行士 軌道上活動レポート Vol.4(10/9〜10/22)
国際宇宙ステーション(ISS)が運用を続けていくためには、実験試料やクルーの食料などを、地上から定期的に補給船で運ぶ必要があります。ISSはスペースが限られているので、補給船が到着する前には物資の受け入れ準備作業を行ったり、離脱する補給船には荷物を積み込むなどの作業が行われます。では、今回は古川聡宇宙飛行士の「きぼう」日本実験棟での活動の一部を紹介しましょう。この期間中には、JEM船内可搬型ビデオカメラシステム実証2号機(Internal Ball Camera2: Int-Ball2)のチェックアウト作業も行われました。
10月9日、地上から静電浮遊炉(Electrostatic Levitation Furnace: ELF)を起動させ、実験を開始しました。現在、米国・フロリダ大学のランガ・ナラヤナン教授が研究代表を務める液体金属の共振と表面張力の関係を調べる実験を進めています。
10月10日、「火災安全性向上に向けた固体材料の燃焼現象に対する重力影響の評価(Flammability Limits at Reduced Gravity Experiment:FLARE)」実験の準備作業作業の一環として、固体燃焼実験装置(Solid Combustion Experiment Module: SCEM)のガスボトルなどを多目的実験ラック(Multi purpose Small Payload Rack:MSPR)に設置しました。
10月13日、日本列島の南側を北上していた台風15号を「きぼう」次世代ハイビジョンカメラ(High Definition TV Camera - Exposed Facility 2: HDTV-EF2)で撮影しました。このカメラの操作は、地上からのコマンドで行われています。HDTV-EF2は、中型曝露実験アダプタ(IVA-replaceable Small Exposed Experiment Platform:i-SEEP)に取り付けられ、「きぼう」船外プラットフォームから地球を撮影します。民間利用などでの活用を目指したカメラシステムです。
10月16日、ELFの試料ホルダとガスボトルユニットを交換しました。その後、地上からELFを起動し、試料ホルダが正しく動作することを確認しました。さらに、Int-Ball2の事前動作チェックを実施しました。
10月17日、ドラゴン補給船運用29号機(SpX-29)でISSに到着する予定の米国の通信実験機器を「きぼう」船外プラットフォームに設置する準備として、「きぼう」ロボットアームの機能チェックをしました。さらにInt-Ball2の航法性能や誘導制御などを確認しました。この日のチェックアウトでは、コマンドに合わせて上下左右に動いたり、くるくる回転したり、また、コマンドに従ってピタリと止まる動作が確認できました。実は、ISSの中は換気のために常に風が吹いており、流されずにピタリと静止するのは難しいことなのです。地上で見守るスタッフからは、コマンドに合わせて動き、制止する姿に歓声が上がりました。
10月18日、シグナス補給船運用18号機(NG-19)内にある物質の梱包を解き、ごみの積み込みを行いました。
10月19日、プログレス補給船(85P)のスラスタを噴射し、ISSリブーストを実施しました。ISSは地球上空約400kmを飛行していますが、学術的にはこの高さではまだ地球の大気圏の中であり、空気の抵抗を受けて高度が次第に下がってきます。そこで、時折、補給船のスラスタを噴射して高度をあげます。これを「リブースト」と呼んでいます。
10月20日、大気圏再突入予定のNG-19にごみや廃棄物の積み込みを行いました。宇宙ではむやみにごみを捨てるわけにはいかないので、大気圏に突入して燃え尽きる補給船に積み込んで、不要なものを廃棄するのです。
最後に古川宇宙飛行士のSNS投稿を1つ紹介します。
「「国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟のエアロックは二重扉になっていて、1気圧の内部とほぼ真空の外部の間で実験装置等を出し入れできます。今回、外部にあった船外実験装置を取り入れ、地上へ戻して解析するための梱包をNASA Moghbeli飛行士とともに行いました。」(古川宇宙飛行士X(Twitter))
11月上旬に打ち上げ予定のSpX-29は、ISSに新たな物資を運ぶと共に、実験試料などをISSから地球へ運ぶ役割も果たします。SpX-29到着後、積み替えをスムーズに行うための準備が今から行われています。
今回のレポートはここまでです。次回のレポートは11月9日(木)頃を予定しています。次回のレポートもお楽しみに。
※本文中の日時は全て日本時間