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2023.02.28

JAXA宇宙飛行士候補者選抜の結果に関する記者会見

会見後の宇宙飛行士候補者2名(左から、佐々木宏理事、米田あゆさん、諏訪理さん、山川宏理事長) Image by JAXA

2021年11月、13年ぶりにスタートしたJAXA宇宙飛行士候補者募集の応募期間終了から約1年。過去最多の4,127人の応募者の中から、書類選抜から第3次選抜までトータル5段階の選考を経て決定した宇宙飛行士候補者に関する記者会見が開かれました。

会見の冒頭で、山川宏JAXA理事長が宇宙飛行士候補者に決定した2名を発表。続いて、この度の宇宙飛行士候補者募集について振り返り、ご応募いただいた方および、選抜課程を応援してくださった企業・団体の方々に感謝の言葉を述べました。

発表されたJAXA宇宙飛行士候補者の2名

JAXA宇宙飛行士候補者に決定したのは、諏訪 理さんと米田 あゆさん。それぞれ、佐々木宏JAXA理事から経歴の紹介がされました。諏訪さんはお仕事で国外在住のためリモートでの出席、米田さんは東京の会見会場での出席となりました。

リモートで記者会見に出席した諏訪理さん Image by JAXA

諏訪 理(すわ まこと)さん
年 齢: 46歳(1977年生まれ)
現 職: 世界銀行 上級防災専門官
出生地: 東京都

東京の会場で記者会見に臨んだ米田あゆさん Image by JAXA

米田 あゆ(よねだ あゆ)さん
年 齢: 28歳(1995年生まれ)
現 職: 日本赤十字社医療センター 外科 医師
出生地: 東京都


JAXA 宇宙飛行士候補者記者会見の様子 Image by JAXA

※以下、敬称略

質疑応答(一部、抜粋)

Q. たくさんの応募者の中から選ばれた現在の心境、喜びの気持ちをお聞かせください。

諏訪:
合格の連絡をもらったのが大体24時間前なのですが、まず最初は驚いたというのと、大きな責任を負うことになったのだなという感覚を持ちました。実は昨日、気持ちが高ぶってあんまり寝られなかったのですが、今後、大きなキャリアシフトになっていくのだな、しっかりと仕事をしていかなければいけないな、という思いを強く持っているところです。

米田:いちばん最初は喜びと同時に驚きがありました。そしてその後、選んでいただいたことに対する責任感、使命というものを感じて、かなり身が引き締まるような思いがしました。しばらく経ってから徐々に、これまでの道のりで支えてくださった方々や、今の自分いることに対して、色々な方々に対する感謝の気持ちが上がってきました。

Q. 宇宙飛行士を目指すきっかけはどのようなところにおありだったのですか?

諏訪:
宇宙飛行士は本当に小さい時からの夢で、いつかはなってみたいという希望があって、今回挑戦させていただきました。私の場合は、いくつかの体験を通して宇宙飛行士になりたいという思いが、だんだんと強くなっていったように思います。私はつくば市の出身なのですが、小学校3年生の時に近所で科学万博が行われまして、両親にねだって何回も何回も連れて行ってもらいました。そこで、科学や宇宙というものに興味を持つきっかけをもらったのかなと思っています。その後、小学校5年生の時、アポロ17号の船長だったユージン・サーナンさんにお会いする機会があり、目の前にいるこの人は月に行ったことがあるのだ!と、ということで宇宙飛行士という職業に興味を持ちました。私が中学生のころ、日本人で初めて秋山豊寛さんが宇宙に行かれて、宇宙に行くプロセスを全部テレビで見られるのは私の世代にとっては初めての経験だったので、それこそかじりついて、ほとんどの番組を見ていました。高校生になった時に、今度は毛利衛さんが日本人として初めてスペースシャトルに搭乗して宇宙に行かれました。その帰国報告会を、当時浜松町にあったNASDA(宇宙開発事業団 ※JAXAの前身)の事務所に聞きに行かせていただいて、そこで宇宙に行った人が語る言葉の重みやキラキラしたものに引かれて、宇宙飛行士になりたいなと考えを新たにしたという経緯があります。

米田:宇宙飛行士を志したのは、幼少期の頃に遡ります。まず、父から宇宙飛行士の向井千秋さんの伝記をもらったのがきっかけでした。漫画だったのですが、描写の中で宇宙から地球を眺めて感動してらっしゃる向井千秋さんの姿が描かれていて、それにすごく感銘を受けました。そこが宇宙飛行士という職業を知るきっかけとなり、そこから宇宙への思いが出てきました。

Q. 今回の選抜は、月面探査も視野に入れたものでしたが、月に対するイメージや、月へ行くかもしれないということについてお聞かせください。

諏訪:
今回応募するにあたって、体を鍛えるために夜、近所を走ることが多かったのですが、月が出ている日ももちろんあり、その月を見ながら「あそこに行く飛行士を選抜する、そういうプロセスに自分はいるのだな」というふうな感覚を持って走っていました。日本人にとって、月は非常に特別な思い入れのあるものであると思うと同時に、当たり前のようにありながら、何か不思議な感覚を与えてくれる、そういう存在なのかなというふうに思っています。先月、試験の中で月面を模したフィールドに立って時間を過ごす機会があったのですが、もし本当に月面に立って、漆黒の中に浮かぶ地球を球体として見ることができたのなら、どんな思いを抱くのだろうという感覚を持ちました。 これからの宇宙開発は本当に面白い局面に来ていると思いますので、少しでもアルテミス計画に貢献できるように、これからの訓練も頑張っていければなと思っております。

米田:今回、宇宙飛行士の募集が発表された日がちょうど月食の日で、募集に対してすごくワクワクしている時に、病院で患者さんから「先生、今日、月食だよ」と言われました。帰り道に月食を見たのですが、交差点のところで、子供も大人もみんなが一緒に月を見ているシーンがありまして、月はみんなの憧れの場所であるし、思いを寄せるところなのだというのを感じた日でした。そして自分がそこにいけるチャンスがあるのであれば挑戦したいと思いました。1年間の選抜中に月を見ていると、夜見上げる月は変わらずいつも優しい光で地球を照らし見守ってくれていると感じ、力を与えてくれる存在でした。月面を模したフィールドに立った時には、 月食の日に、地球は月面から見るとどう見えるのだろう、地球は優しく見えるのだろうか、それを見た人はおそらくまだいないのではないか、と思いを巡らせました。月に立つことができるのであれば、そういった経験を伝えていきたいと思いますし。 それに向かって精進してまいりたいと思います。

ご自身の強みは?どのような宇宙飛行士になりたいですか?

諏訪:
目標をたてて淡々と努力をすることは得意な方だと思います。長時間でも諦めない粘り強さも持っています。宇宙飛行士から夢や希望やモチベーションをいただいてきた少年時代でしたので、自分もできれば次の世代に夢や希望を与えられる宇宙飛行士になりたいです。(46歳で選抜されたことについて)宇宙飛行士は体が資本なので、健康管理を気をつけてなるべく長い間貢献できるように努力したいと思います。この年齢で選抜されたということは、今までの経験との掛け算でどのような付加価値を社会に還元できるか問われると思っています。この先数年は訓練に集中する期間が続くと思いますが、頭の片隅でこれまでの経験をどう宇宙飛行士に活かせるか常に考えていきたいと思っています。

米田:強みとしては、医師としての働きが求められていると思っていますし、これまで学んできたことを生かせればと考えています。特性としては、何か人の輪があった時に、その場を和ませられる存在でありたいと考えています。(自分は)宇宙開発のチーム、国際間を通してのチーム、そうした中でのチームの輪を大事にできるような存在だと思いますし、それが強みだと思います。どういう宇宙飛行士になりたいかということについては、まずは応援してくださっている日本・世界の皆さんには、気さくで身近に感じてもらえて、宇宙に対する思いを身近に感じるきっかけになるような存在でありたいです。月面への道のりは大変だと思いますが、可能であれば自分が月へ行きたいと思います。

Q. 宇宙に行かれた際に、これがやりたい、ということがあれば教えてください。

米田:
宇宙に行ったらやりたいことは、まずは微小重力環境を体験して、宇宙からこの素敵な星である地球を眺めたいということと、行ったことがないところに行ってみたい、追求してみたいというのは、人類の本能的な思いだと思いますし、そういった思いは私にもあるので、地球からより遠いところの探査をして、宇宙をどんどんどんどん開拓していくような存在になりたいなと思います。

諏訪:私も微小重力環境を体験してみたいです。地球低軌道からもそうですが、地球から遠く離れた視点から地球を見てみたいという思いもあります。あるいは月をもうちょっと間近で見てみたいとも思います。あと、最近、色んな種類の宇宙食があるというのを聞いておりますので、宇宙食も色々試してみたいというふうに思っています。

Q. 今後、宇宙飛行士の募集は増えていくと思うのですが、実際に試験を受けて合格されて、これから受ける後輩たちにこれだけはやっておくべきということがあれば教えてください。

米田:
1つは、体を動かし続けることは大事かなと考えています。選抜の期間が1年間あるのですが、その中で調整するのではなく、その前から調整を定期的にやっていくのは大事かなと思います。あともう1つは、私が実際に応募するにあたって、周りの人からこのチャレンジに対して、勇気をもらった、ありがとうという言葉をいただいたりしたのですが、私もいろんな方の影響を受けて、今の自分があるし、私もわずかながらでも、何かいい影響を与えられるということは、とても嬉しいことだと感じていて、そういった周りの人との繋がりを大事にしてほしいと考えています。 

諏訪:私も米田さんと一緒で、体を動かす、体を鍛えるというのは重要なのかなというふうに思っています。 それから、今回この選抜が始まった時に、先輩の宇宙飛行士の方々がアドバイスをしてくださる動画がJAXAのホームページにいくつか上がっていて、その中で、日々の仕事を一生懸命するのが重要だということを仰っていた先輩飛行士の方がいらっしゃいました。今思い返してみると、日々の私の仕事の中でも、例えばチームで仕事をするようなことは多くあるのですが、その仕事を一生懸命すること自体が宇宙飛行士の試験の準備にもなっていたのだなというふうに思います。

画面越しでの握手の様子 Image by JAXA

宇宙飛行士候補者となった2人は、約2年間の基礎訓練を重ね、訓練結果の評価によって、JAXA宇宙飛行士に認定されます。これからも、アルテミス世代の宇宙飛行士候補者への応援をよろしくお願いします。

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