若田宇宙飛行士 軌道上活動レポート Vol.5(11/26〜12/9)
ドラゴン補給船運用26号機(SpX-26)の到着により様々な実験関連用品が届き、「きぼう」日本実験棟ではいくつかの新たな実験が始まりました。今回も、若田宇宙飛行士の活動の様子をご紹介していきます。
11月27日、SpX-26が4時20分(日本時間)に米国フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられ、約17時間後の21時39分(日本時間)にISSにドッキングしました。SpX-26によって、高品質タンパク質結晶生成実験(Protein Crystal Growth: PCG)のサンプル、「長期宇宙滞在がヒトの脳循環調節機能に及ぼす影響(Cerebral Autoregulation)」実験の関連品など、「きぼう」で使用される様々な実験品が国際宇宙ステーション(ISS)に到着しました。
11月28日、「モデル生物を用いた宇宙フライトが及ぼす加齢への影響(NIS)」実験の関連物品をSpX-26から「きぼう」船内に移動させました。この実験は、加齢影響評価群と運動観察群から構成されますが、まず、加齢影響評価群の試料を細胞培養装置追加実験エリア(Cell Biology Experiment Facility-Left: CBEF-L)の1Gおよび微小重力環境下に設置し、培養を開始しました。この実験は、前回のレポートでもご紹介しましたが、微小重力環境で運動機能が低下する要因などについて、線虫というモデル生物を使い、神経系への影響に焦点を当てて解明していくものです。
またこの日は、SpX-26でISSに到着した高品質タンパク質結晶生成実験(PCG)のサンプルを「きぼう」搭載用ポータブル冷凍・冷蔵庫(Freezer-Refrigerator of Stirling Cycle2: FROST2)に設置し、実験を開始しました。20℃で実施するタンパク質結晶実験(Moderate Temperature Protein Crystal Growth:MT PCG)は、若田宇宙飛行士が作業を行い、4℃で実施する実験(Low Temperature Protein Crystal Growth: LTPCG)は、マン宇宙飛行士とカサダ宇宙飛行士が行いました。
さらに、この日開催された、筑波宇宙センターの「きぼう」運用管制室とのオンライン会議では、若田宇宙飛行士の宇宙累計滞在期間が、11月27日に累計400日を超えたことを記念し、管制室から拍手でお祝いしました。
11月30日には、NISの運動観察群の試料をライブイメージングシステム(Confocal Space Microscopy: COSMIC)に設置し、地上からサンプルの観察を行いました。そして、翌12月1日には、観察を終えた試料を冷凍・冷蔵庫(Minus Eighty degree Celsius Laboratory Freezer for ISS: MELFI)に収納しました。CBEF-Lで培養していた加齢影響評価群の試料は、一部を化学固定してMELFIに収納し、残りに給餌をしてCBEF-Lに戻し、培養を再開しました。
12月2日、小型衛星放出機構(JEM Small Satellite Orbital Deployer: J-SSOD)による超小型衛星放出(J-SSOD#23)があり、その様子を若田宇宙飛行士が写真撮影しました。今回は、ウガンダ政府の超小型衛星PearlAfricaSat-1、ジンバブエ国家地理宇宙機関が開発した超小型衛星 ZIMSAT-1など、4機の放出に成功しました。放出の様子は、YouTubeのアーカイブ放送で見ることできます。
12月8日、次世代水再生実証システム(JEM Water Recovery System: JWRS)の実験再開に向けて脱気膜(液体は通過せず気体だけを透過する膜)の交換作業をしました。JWRSは、将来の有人宇宙探査に向けた水再生システムの技術実証を行う実験装置です。 現在、ISSで使用している水再生システムよりも、小型、低消費電力、高再生率、メンテナンス性を向上させた次世代型システムの開発を目指します。
12月9日、静電浮遊炉(Electrostatic Levitation Furnace: ELF)の試料ホルダを取り外しました。今回の実験ではガラスの成り立ちなどを調べる「新奇機能性非平衡酸化物創製に向けた高温酸化物融体のフラジリティーの起源の解明(Fragility)」実験を実施しました。
今回のレポートはここまでです。引き続き若田宇宙飛行士への応援をよろしくお願いします。
次回のレポートは、12月28日(水)頃を予定しています。
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