若田宇宙飛行士 軌道上活動レポート Vol.2（10/17～10/28）
若田光一宇宙飛行士が国際宇宙ステーション（ISS）に到着してもうすぐ1か月になろうとしています。「きぼう」日本実験棟での実験に関する作業や地上との交信イベントなど、若田宇宙飛行士の活動も忙しさを増してきました。その活動の様子と「きぼう」日本実験棟で行っている実験についてご紹介します。
10月21日、若田宇宙飛行士は、宇宙実証用ハイパースペクトルセンサ（Hyperspectral Imager SUIte: HISUI）の観測データ記録用のハードディスクを交換しました。HISUIは、従来のセンサよりも地表の物質を詳細に識別することのできるセンサです。10月12日より、HISUIの観測データが衛星データプラットフォーム「Tellus（テルース）」に搭載され、一般公開を開始しました。資源探査、環境、農業、防災など、様々な分野に活用できます。
同じく21日には、「きぼう」ロボットアーム（JEM Remote Manipulator System: JEMRMS）のチェックアウト作業も行いました。現在は、JEMRMSは、地上の管制室からのコマンドで操作していますが、船内実験室の中に操作卓があり、かつては宇宙飛行士が動かしていました。若田宇宙飛行士も2009年にISSへ長期滞在した時に、全天X線観測装置（Monitor of All-sky X-ray Image: MAXI）を船外実験プラットフォームへ取り付ける時にJEMRMSを操作していました。今も、その機能は残されており、このように定期的に、機能チェックを行います。若田宇宙飛行士は、これまでロボットアームの開発や運用準備で一緒に仕事をさせてもらったチームの皆さんの顔が浮かんだそうです。若田宇宙飛行士は自身のTwitterでも作業の報告をしています。
10月24日、埼玉県さいたま市に在住・在学の子どもたちと交信するイベント『The SPACE TIME inさいたま』が開催されました。さいたま市出身の若田宇宙飛行士は地元の子どもたちとの交流を楽しみました。「目標を持ち、失敗も教訓にして夢をつかんで下さい」という若田宇宙飛行士の言葉は、参加した子供たちの心に深く刻まれたことでしょう。
さらに、この日は「きぼう」搭載用 ポータブル極低温冷凍冷蔵庫（Freezer-Refrigerator of Stirling Cycle2: FROST2）の制御温度センサスイッチを切り替えました。FROST2は実験サンプルなどの試料を収納する恒温槽（長時間同じ温度に保つことができる容器）です。庫内の温度を-100℃～+60℃で制御可能な性能を持っています。今回準備をしたFROST2を利用して、11月後半から高品質タンパク質結晶生成実験（Protein Crystal Growth: PCG）が実施される予定です。
10月24日、若田宇宙飛行士の宇宙空間での累積滞在期間が365日になりました。5回の宇宙飛行を重ね、この記録を達成した若田宇宙飛行士は、クルー、運用管制チームなどの仕事仲間、家族、友人に感謝を伝えるメッセージをTwitterで発信していました。
また、10月17日から27日にかけて、地上からの操作で、固体燃焼実験装置（Solid Combustion Experiment Module: SCEM）を使用した「火災安全性向上に向けた固体材料の燃焼現象に対する重力影響の評価（Flammability Limits at Reduced Gravity Experiment: FLARE）」実験が実施されています。FLAREの実験結果は、宇宙火災に対する国際的な安全基準を制定するための基礎的な資料になると期待されています。今後も継続的に行われ、将来の有人宇宙探査にも役立つ貴重なデータが蓄積されていきます。
10月28日、静電浮遊炉（Electrostatic Levitation Furnace: ELF）の試料ホルダを交換しました。ELFは、静電気力を使って浮遊させた実験試料にレーザーを照射し、融かすことのできる装置です。容器を使わず融かすことで、不純物のない試料の物質そのものの状態を観察し、様々な性質を調べることができます。若田宇宙飛行士はELFの試料ホルダの交換は初めての作業とTwitterで報告していました。
今回のレポートはここまでとなりますが、軌道上の若田宇宙飛行士の様子を動画で見たい方に、以下をご紹介します。
次回のレポートは、11月17日 (木) 頃を予定しています。
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