JAXA若田光一宇宙飛行士 打上げ直前記者会見
来月6日以降に打上げが予定されているクルードラゴン宇宙船運用5号機(Crew-5)に搭乗し、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在する若田光一宇宙飛行士が、9月29日に打上げ直前記者会見をオンラインで行いました。
若田宇宙飛行士冒頭の挨拶(抜粋/要約)
「9月19日から打上げに向けた隔離生活が始まり、ヒューストンにあるNASAジョンソン宇宙センターにある宇宙飛行士の隔離施設および自宅の方での隔離生活を行いながら、スペースX社のクルードラゴン宇宙船の訓練施設での最終模擬訓練や、ISS の軌道上の運用と利用テーマに関連する運用チームの皆さんとの打ち合わせなどを連日実施しています。打ち上げに向けて準備は順調に進んでいます。」
「私がISSに滞在するインクリメント68という期間のJAXAキーメッセージは「世界が認め、求める和のリーダーシップ」。このキーメッセージのもとで世界に求められる日本の技術やリーダーシップで人類に貢献すること、それから「きぼう」利用の三つの柱である「科学/有人宇宙技術/民間利用」の領域で成果を創出して、将来の低軌道利用や有人宇宙探査を先導し続けること、そして互いに思いやるチームワークで利用成果の最大化を目指すこと、この三つの実現に貢献したいというふうに思っています。」
質疑応答(一部)
今回のミッションで個人的に楽しみにされている、あるいは挑戦してみたいミッションはどういったことでしょうか?
「今回のインクリメント68では「きぼう」日本実験棟を利用したテーマが多くあります。特に「きぼう」利用の三つの分野には、私がこれまで携わることがなかった実験、研究利用がたくさんありますので、そういったことについて挑戦していきたいと思っています。」
「特に、国際宇宙ステーションは月・火星探査に向けた技術実証するために重要な場ですので、例えばその探査に使われる有人与圧ローバー・推薬生成プラント・燃料電池など、そういった様々な探査ミッションに使われるシステムの開発のためのデータを取得する実験には非常に注目しており、ぜひ自分もミッションに一緒に参加したいと思っています。」
「具体的には、有人与圧ローバー、推薬生成プラント、月の離着陸船などに使われる液体が、月や火星の低重力環境下でどんな挙動を示すか、そのデータを取得することが月や火星で使うシステムの適用化設計に寄与できるので、国際宇宙ステーションの「きぼう」や「こうのとり」といったISS計画で培った技術をさらに生かして、月や火星の探査でも日本の技術が先導していけるように、こういったデータ取得に関して挑戦していきたいところです。」
今回の「きぼう」利用ミッションには、大学が関わっている実験や、中高生が関わるプログラミング競技会などがあると伺っています。ミッションにあたって、次の世代の学生の方たちにどういったことを伝えたいかお聞きできますか。
「今回のミッションには学生さんを含めた人材育成に関するものとして、「きぼう」ロボットプログラミング競技会や、アジア各国の青少年が考えた実験を宇宙で行うアジアントライゼロGなどがあります。」
「学生さんたちにお伝えたいのは、宇宙はそんなに遠いところにあるものではないということ。自分たちが一生懸命考えた実験や作ったものが実際に宇宙で観測できるんだ、動くんだということを実体験してもらって、主体的に宇宙の利用や開発に挑戦して欲しいと思います。ロボットプログラミング競技会にしてもアジアントライゼロGにしても、うまくいかないミッションはたくさんあると思いますが、目標を高く持ち、課題をしっかり明確に捉えて挑戦していくこと、そして失敗してもそれを教訓として次につなげていくこと、あきらめずに挑戦を続けていくことの大切さ、こういったものを実体験として経験して、将来の宇宙開発を担う方たちになって欲しいという希望を持っています。」
チームワークに関しての質問になりますが、クルーの皆さんと一緒に過ごす中で、印象的なエピソードや会話があれば教えてください。
「印象的な会話が毎日あるのでどれを挙げればいいか難しいのですが(笑)例えばカリフォルニア州にあるスペースX社で訓練を行う時は、1週間くらいカリフォルニアのホテルに滞在して、そこで食事なども一緒にしながら生活していきますが、その際に好きな映画について語り合ったりして、映画の中のキャラクターやチームのカラーのようなこと、どの人がどんな役割を演じているのかということを、我々の宇宙での作業と関連付けながら話をする機会がありました。通常の訓練ではなかなか時間がないのですが、一緒に共同生活をする時間が取れることで、通常の業務や訓練とは離れたかたちでチームビルディングのために大切な会話の時間が取れましたし、宇宙に行く前に共同生活をしてお互いを知り合う時間があることは重要だと感じました。」
若田宇宙飛行士会見終了の挨拶(抜粋/要約)
「私がはじめて宇宙に行ってから22年。この間に「きぼう」日本実験棟の組立が終わり、「きぼう」が様々な利用成果を創出してきていますが、日本が「きぼう」や「こうのとり」など、ISSを舞台にした有人宇宙技術の分野で獲得してきた技術や人材、それを次の月探査や火星探査につなげていく必要があるというふうに思っています。そういう意味で ISS が使える間に「きぼう」日本実験棟を含めて、その優れた能力を活かして利用を最大化できるように努力していきたいと思います。現在、新しい JAXA の宇宙飛行士を募集中ですが、将来の有人宇宙活動を切り拓いてくださる世代の皆さんに新しい希望や夢を持っていただけるようなミッションにしたいなというふうに思っています。打ち上げまであと一週間ほどになりましたが、体調管理に留意してベストコンディションで打ち上げに臨んで、そして ISS での様々な任務を確実に遂行したいと思いますので、引き続き応援をよろしくお願いいたします。」
記者会見の模様は、YouTubeでライブ配信されました。見逃した方は、こちらでアーカイブ配信されていますので、ぜひご覧ください。
また、打上げの様子は、YouTubeにて中継いたしますので、ぜひ、若田宇宙飛行士の旅立ちを、一緒に見守りましょう!