大西宇宙飛行士 軌道上活動レポート Vol.10(7/14〜7/27)
国際宇宙ステーション(ISS)での活動も残りわずかとなったこの期間、大西宇宙飛行士は宇宙実験やメンテナンスなど、多忙な日々を過ごしました。
それでは、この期間で行われた大西卓哉宇宙飛行士の活動の一部を紹介します。
7月14日、大西宇宙飛行士は米国の民間企業アクシオム・スペース社による民間宇宙飛行士ミッション「Ax-4」のクルーが使用していたクルードラゴンの離脱(アンドッキング)に向けた準備をしました。具体的には、実験サンプルを保存し、地上へ持ち帰るために、「きぼう」に設置していた小型冷凍庫をクルードラゴンに移設しました。Ax-4は、同社による4回目のISS滞在ミッションで、4名の宇宙飛行士が6月26日から滞在していました。大西宇宙飛行士X

7月15日、Ax-4クルーが無事にISSを離脱した後、大西宇宙飛行士はISSトイレのメンテナンスを実施。尿を空気と共に吸引し、遠心分離するためのポンプセパレーターという部品を交換しました。
7月15~16日、大西宇宙飛行士は仲間の宇宙飛行士とともに、水再生装置の触媒反応器の交換作業をしました。15日は、大西宇宙飛行士がジョニー・キム宇宙飛行飛行士と共に作業に必要な物品の収集と事前準備を行い、実際の交換作業は16日にアン・マクレイン宇宙飛行士が行いました。
7月17日、「きぼう」のメンテナンスの一環として、船内実験室と船内保管庫間の通風換気装置のメッシュカバーを清掃し、取り付け位置を入れ替えました。また、「宇宙環境が植物の細胞分裂に与える影響の解明(Effects of space environments on cell division in plants: Plant Cell Division)」実験の準備作業として、植物実験ユニット(Plant Experiment Unit: PEU)の機能確認と、細胞培養装置(Cell Biology Experiment Facility: CBEF)の乾燥運転を実施しました。
さらに、固体燃焼実験装置(SCEM)を搭載する多目的実験ラック(Multi-purpose Small Payload Rack: MSPR)の空気漏れ確認も行いました。
7月18日、「きぼう」の空調フィルターの風量低下に対応するため、フィルターを取り外して徹底的な清掃(ディープクリーニング)を行いました。空調フィルターの清掃は毎週実施しておりますが、取り切れない汚れが蓄積し目詰まりを起こすことがあります。大西宇宙飛行士X

7月20~21日、無重力カップの紹介や、ISSのリブースト(軌道上昇)についての解説動画を撮影しました。これらの動画は、7月20日と7月21日 に大西宇宙飛行士Xでそれぞれ紹介しています。よろしければご覧ください。
7月22日、JEM船内可搬型ビデオカメラシステム実証2号機(IntBall-2)とドイツ航空宇宙センター(DLR)が開発したロボットCIMON※1 が相互通信と連携作業を行う実証ミッション「ICHIBAN※2」のセットアップ作業を行いました。
※1 Crew Interactive MObile companioNの略称
※2 Cooperation regarding the IntBall-2 CIMON Hovering Intelligences Building first AI Networkの略
また、同日には細胞培養装置追加実験エリア(CBEF-L)の微小重力の培養部に植物実験ユニット(PEU)を設置し、「きぼう」ネットワーク・ストレージ(NeST)のメッシュ清掃も実施しました。
7月23日、細胞培養装置CBEFの拡張エリアに関する定期メンテナンスの準備作業を実施しました。CBEFは2020年に拡張され、より多様な実験ニーズに対応できるようになっています。地上の管制チームと連携しながら、遠隔操作により作業が進められました。
7月24日、7月22日に設置したPEUを取り外し、CBEF-Lの微小重力環境から1G(地上と同じ重力)環境の培養部へ移設しました。移設後、地上からCBEF-Lの機能確認も地上から実施され、装置の正常な動作が確認されました。
7月25日、ICHIBANミッションが実施されました。まず、欧州実験棟「コロンバス」にて、大西宇宙飛行士がCIMONに音声で作業指示を出します。次に、その情報が「きぼう」にいるIntBall-2に送信され、それを受け取ったIntBall-2が指示に従って移動・撮影し、映像を大西宇宙飛行士に送ります。22日は通信が確立できませんでしたが、この日はそれぞれの通信が確立され、IntBall-2からの映像を確認することができました。

同日、火災安全性向上に向けた固体材料の燃焼現象に対する重力影響の評価(Fundamental Research on International Standard of Fire Safety in Space -base for safety of future manned mission:FLARE)実験の準備として、固体燃焼実験装置(Solid Combustion Experiment Module:SCEM)の試料カードに発生したトラブルへの対応を行いました。さらに、CBEF-Lの機能確認後の片づけ作業も実施しました。
7月26日、宇宙環境では地上とは異なる条件下で実験が行われるため、予期せぬトラブルが発生することもあります。この日は、前日に発生したSCEMの不具合に対して、地上の管制員からの指示を受けながら、大西宇宙飛行士が対処作業を行いました。
宇宙飛行士と地上チームが連携して問題解決を行うことは、「きぼう」運用の信頼性を支える重要な要素です。大西宇宙飛行士X

7月27日、ロシアのキリル・ペスコフ宇宙飛行士から差し入れされたデザート「トヴァローク」のレビュー(食レポ)動画をSNSで公開しました。ISSには様々な国の宇宙飛行士が滞在しており、国際色が豊かになっています。宇宙では各国の宇宙食を持ち寄り、食文化の交流も盛んです。宇宙食は、宇宙飛行士の栄養補給だけでなく、ストレス軽減にも役立っていますが、それぞれの国の文化を知るきっかけにもなりますね。
大西宇宙飛行士は、「帰還したらラーメンを筆頭に食べたいものはいくつもありますが、この味だけは地上でもきっと恋しくなると思います。」とコメントしており、宇宙での食を楽しんでいる様子が伝わってきます。大西宇宙飛行士X
JAXAも日本の味を宇宙で食べられるように、食品会社などと宇宙日本食を開発しています。宇宙日本食は、現在、52品目が認定されています。
今回のレポートは以上です。
次回は8月末を予定しています。
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