Report & News大西宇宙飛行士の活動レポート&ニュース

大西宇宙飛行士との交信イベント「感動!!宇宙航空教室」を開催しました

6月25日に、国際宇宙ステーション(ISS)に長期滞在中の大西卓哉宇宙飛行士とリアルタイムで交信する特別イベント「感動!!宇宙航空教室」を全日本空輸株式会社(ANA)と共催しました。
本イベントでは、「空と宇宙」をテーマに、小学生から高校生までの皆さんからイラストを募集しました。集まった作品は当日会場に展示され、イラストのデータはISSに長期滞在中の大西卓哉宇宙飛行士にも届けられました。
イベントの様子と、後日改めて撮影された、大西宇宙飛行士が「空と宇宙」をテーマに描かれたイラストを宇宙で見て語った感想はJAXA YouTubeチャンネルでもご覧いただけます。

イベント会場の様子(Image by JAXA)

イベントの概要

今回のイベントは、小学生から高校生までを対象とし、たくさんの応募者の中から抽選で選ばれた親子が、会場のANA Blue Baseに集まりました。第1部は宇宙と地上を結ぶ「大西宇宙飛行士とのリアルタイム交信」、第2部は現役のパイロットとフライトディレクタが登壇する「空と宇宙をつなぐ」と題したトークセッションの2部構成で行われました。第1部では、ISSと会場をつなぎ、大西宇宙飛行士による特別講義と質疑応答を実施。質疑応答では、6名の子供たちが自身の疑問や想いを大西宇宙飛行士にぶつけました。第2部では、ANAのボーイング777機機長とJAXAのフライトディレクタが、それぞれの仕事を紹介しつつ、どちらもチームワークや冷静な判断が重要なことなど、空と宇宙の関係性を語りました。

【第1部】大西宇宙飛行士との交信

第1部は、ISSに滞在中の大西宇宙飛行士とのリアルタイム交信です。最初に、大西宇宙飛行士の搭乗したクルードラゴン宇宙船の打ち上げの模様を米国で訓練を行っているANAのパイロット訓練生が現地見学したレポート動画が上映されました。

その後はいよいよ宇宙との交信です。前方の大型モニターに大西宇宙飛行士の姿が映ると、会場からは「おおー」という歓声が上がりました。会場から元気よく「大西さーん」と呼びかけると、大西宇宙飛行士が手を振りながら、あいさつをし、宇宙についての特別講義がスタートしました。

特別講義は、マイクから手を放しても、下に落ちずにプカプカと浮かぶ様子や、地球儀の模様の入ったボールが回転し続ける様子を見せ、参加者を驚かせました。このような現象が起こる理由として、大西宇宙飛行士は「ISSが地球の周りをすごいスピードで回っているから」と説明ました。ISSのスピードと地球の重力がつり合っていることで、ISS内部は重力がほとんどない微小重力環境になっているのです。

地球のボールを使って微小重力を説明する大西宇宙飛行士(Image by JAXA)

さらに、微小重力環境の不思議さをより多くの人がイメージできるように、大西宇宙飛行士自身が浮いたり、回転したり、また飲み物のパックから出した液体が、球状になって浮いたりする様子も見せました。ISSでは、微小重力環境を利用して宇宙でたくさんの実験が行われていることを説明しました。

液体が球体になることを紹介する大西宇宙飛行士(Image by JAXA)

質疑応答のコーナーでは、6人の子どもたちが代表して質問しました。「子供のころの夢」、「宇宙の生活でたいへんなこと」、「ISSで植物を育てるとどうなるか」など、バラエティに富んだ質問に対し、大西宇宙飛行士はていねいに答えました。「飛行機のパイロットと宇宙飛行士に共通する大切なことは何か」という質問に対しては、「どちらの仕事もすごく緊張する場面でも、普段通りのことができるのが大事」と答え、「テストやスポーツの大会など、緊張する場面をなるべくたくさん経験するのがいいのではないかな」とアドバイスしました。

子どもたちと大西宇宙飛行士のやり取りの様子(Image by JAXA)

最後に、大西宇宙飛行士が「今日の僕の話をきっかけに、宇宙について少しでも興味を持ってくれる人が出てきたら、うれしいです。そして、将来、宇宙飛行士を目指してもらえると、とてもうれしいです」とあいさつして、リアルタイム交信が終わりました。

【第2部】トークセッション「空と宇宙をつなぐ」

第2部では、ANAのパイロット上原荘太郎さんとJAXA フライトディレクタの関川知里が登壇。ANAの浅原菜穂さんがファシリテーターとして、トークセッションを進行しました。

上原機長は、「大西宇宙飛行士と同じ年に働き始めた同級生みたいな関係」と自己紹介し、現在はボーイング777型機の機長として、海外や国内の主要都市間を飛行していると話しました。パイロットは、雲を避けるために管制官と交信をしたり、燃料の残量をチェックしたりと、操縦以外にもやることがたくさんあるという説明がありました。飛行機の中から外をチェックする際に、夜景、星空、オーロラなど、美しい風景を見ることができますが、「何よりおもしろいのは大きな飛行機を操縦することです。やりがいのある仕事だなと思って、いつも仕事しています」と語りました。

大西宇宙飛行士とのエピソードを紹介する関川フライトディレクタ(Image by JAXA)

関川フライトディレクタは2011年にJAXAに入構し、2018年から「きぼう」日本実験棟の運用を担当するフライトディレクタを務めています。フライトディレクタは、地上で「きぼう」のサポートをする管制チームの一員です。管制チームは、宇宙実験の実施、快適な環境の維持、緊急時の対応の3つの仕事を担っていいます。フライトディレクタは、それらの仕事をしっかりと実施していくためにチームを取りまとめる役割で、オーケストラの指揮者にたとえられることもあると説明しました。

そして、上原機長、関川フライトディレクタのそれぞれが、大西宇宙飛行士とのエピソードを語り、話題は「空と宇宙の仕事の共通点」に移っていきました。上原機長は「副操縦士、CA(キャビンアテンダント)、地上スタッフ、管制官、整備の人たちと連携を取りながらチームワークを高めることで安全につながることが共通している」と話しました。その意見に、関川フライトディレクタも同意し、「安全を守るところや、計画を守れるように、いろいろな情報を集めながら、その場その場で判断しながら動く必要がある点も共通している」と付け加えました。

さらに、諏訪理宇宙飛行士、米田あゆ宇宙飛行士が受けた宇宙飛行士の基礎訓練項目で、ANAホールディングスが提供した心理支援プログラムが実施されたことが紹介されました。このプログラムに一緒に参加した関川フライトディレクタは、「私たちがいつも管制室で大事にしているチームワークを、パイロットの皆さんも大事にしていることを知って、とてもうれしく思いました」と感想を述べました。

最後に、上原機長から「これからも1日1日を大切に過ごしてください。皆さんのこれからの毎日がわくわくしたものになるよう、心から願っています」と、関川フライトディレクタからは「宇宙の活躍のフィールドは月火星に向かっていきますので、ぜひ一緒に新しい未来を作っていけたらいいなと思います」と、参加した子どもたちにメッセージを送りました。

大西宇宙飛行士と会場に集まった参加者の記念撮影(Image by JAXA)

※本文中の日時は全て日本時間

JAXA 有人宇宙技術部門 Humans in Space人類の
未知への挑戦を。

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