大西宇宙飛行士 軌道上活動レポート Vol.8(6/16〜6/29)
大西宇宙飛行士の2回目の国際宇宙ステーション(ISS)滞在の期間も残り少なくなってきました。宇宙実験だけでなく、交信イベントなどで地上の皆さんと交流する機会もありました。
それでは、この期間で行われた大西卓哉宇宙飛行士の活動の一部を紹介します。
6月16日、静電浮遊炉(Electrostatic Levitation Furnace: ELF)の試料カートリッジの窓を清掃しました。さらに、「きぼう」の船内実験室(Japanese Experiment Module: JPM)の窓の定期検査を実施しました。

6月17日、交信収録が実施され、大西宇宙飛行士が地上からの質問に答えました。
6月18日、JEM船内可搬型ビデオカメラシステム実証2号機(Internal Ball Camera2: Int-Ball2)を使用した実証実験が行われました。その後、Int-Ball2から撮影・記録されたデータを地上へ送る「ダウンリンク」を実施しました。
続いてその日は、ELFのソフトウェアをアップデートするために実験装置に接続されているケーブルの接続を変更しました。ELFは、静電気の力によって、融点の高い金属などの試料を空間中に浮遊させて、その試料にレーザー光線を当てて加熱し、溶融・凝固させることができる装置です。地上では重力があるために容器が必要になりますが、微小重力下では容器などを使わずに実験を行うことができます。そのため、不純物の混入を避けることができ、溶融された液体状の試料から純粋なデータを得ることができます。
6月19日、地上からELFの位置制御ソフトウェアのアップデートをし、終了後、大西宇宙飛行士がケーブルの接続を元に戻しました。
大西宇宙飛行士は前日の作業について、SNSに投稿しました。
「昨日は途中から時間に追われるバタバタした1日になりましたが、JAXAタスクでは静電浮遊炉ELFのソフトウェアアップデートに必要な下準備をしました。
軌道上の実験機器は、より実験しやすいように、より良いデータを取得できるように、よりメンテナンスしやすいように、アップデートされていきます。」大西宇宙飛行士X(Twitter)
6月20日、「きぼう」とJAXA東京事務所プレゼンテーションルームをつなぎ、メディア関係者向けに大西卓哉宇宙飛行士の軌道上記者会見を実施しました。
当日は、東京の会場に集まった記者からたくさんの質問を受けました。その様子は大西宇宙飛行士ISS長期滞在ミッション特別サイトに、レポートとして掲載されています。動画はJAXAのJAXA YouTubeチャンネルにアーカイブが公開されております。
どちらも、ご覧ください。

6月22日、宇宙日本食の紹介ビデオを撮影しました。
6月24日、大西宇宙飛行士が実験データ制御装置(Payload Data Handling unit: PDH)を新しいものに交換し、起動確認をしました。PDHは、実験で取得したデータを地上に送るために使用する装置です。交換した新しいPDHは、ドラゴン補給船運用32号機(SpX-32)で地上から運びこまれたものです。
この作業の様子は、大西宇宙飛行士がSNSに投稿しています。
「今日はきぼうの実験データ制御装置の交換を実施。ラックの裏側の配線をいじる為にラックを回転させる必要があります。本来、無重力の世界では上下に差はないのですが、照明のある方が上という意識がどうしても強いので、天井に貼り付いて作業をしていると何となく違和感を感じるので不思議です😅」大西宇宙飛行士X(Twitter)
同日、6月7日から実施してきた「微小重力下におけるシリコンゲルマニウム結晶育成の研究(Study of SiGe crystals: Hicari-II)」実験の8回目の結晶成長実験を終えました。大西宇宙飛行士は試料カートリッジの取り外しと分解を行っています。Hicari-IIは、「きぼう」に設置されている温度勾配炉(Gradient Heating Furnace: GHF)を使って、シリコンゲルマニウム(SiGa)結晶を作り、結晶を高速化に成長させる方法を探ります。
6月26日、新型宇宙ステーション補給機(HTV-X)1号機の打ち上げに向けて、地上と連携して近傍通信システム(Proximity Communication System: PROX)や関連機器のチェックをしました。さらに、無線環境モニターシステムのリモートセンサーユニットのバッテリー交換もしました。
6月27日、前日に引き続き、PROXと関連機器のチェック作業を行いました。
6月28日、大西宇宙飛行士が、アクシオム・スペース社民間宇宙飛行士ミッション(Ax-4)に協力したエピソードをSNSに投稿しました。
Ax-4は、米国の民間企業アクシオム・スペース社が実施する4回目のISS滞在ミッションです。今回は、NASAの宇宙飛行士として複数回のISS長期滞在、10回以上の船外活動の経験をしているペギー・ウィットソン宇宙飛行士をはじめ4名の宇宙飛行士が、6月26日から2週間ほどの予定で滞在しています。
「Ax-4(アクシオム4)クルーは基本的に彼ら独自のサイエンステーマを実施しますが、彼らが訓練を受けていない範囲など一部は私たちもヘルプに入ります。
ハンガリーのTibor Kapu飛行士と冷蔵サンプルの移設を協力して行いました。他に彼らが来週から使用する顕微鏡の設置も実施しました。」大西宇宙飛行士X(Twitter)

今回のレポートはここまでです。
次回のレポートは、7月下旬を予定しています。
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