大西宇宙飛行士ら、ケネディ宇宙センターに到着

国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在クルーの大西卓哉、アン・マクレーン、ニコル・エアーズ、キリル・ペスコフ宇宙飛行士は、2025年3月8日4時45分頃、NASAケネディ宇宙センター(KSC)に到着しました。
到着後、マクレーン宇宙飛行士が代表として、「今回が2度目の長期滞在ミッションとなる大西宇宙飛行士は、国際宇宙ステーション (ISS)に到着後、ISS船長(ISSコマンダー)として指揮をとります。」と紹介しました。

さらに、「このミッションを伝えていただくことに感謝します。ISSでは、さまざまな病気の治療につながる実験など、私たちの生活に貢献できるミッションに取り組んでいきます。ISSでのミッションは決して秘密ではなく、すべての人々に共有されるものなのです。」と英語で述べました。マクレーン宇宙飛行士の熱いスピーチのあとは、4人で写真撮影を行ないました。会場から離れる際、大西宇宙飛行士は「頑張ってきます!」と大きく手を振りました。

その後、クルーの隔離施設からオンライン記者会見を行い、大西宇宙飛行士は、報道関係者からの質問に答えながら、ISS船長としての取り組み方や楽しみにしているミッション、長期滞在に対する意気込みを語りました。
質疑応答(大西宇宙飛行士の応答のみ抜粋)
宇宙食や生活用品などで、特にリクエストしたものありますか。
「前回のフライトでは、宇宙食はストレスの軽減とチームワークの強化に重要なことを学んだので、いくつか宇宙日本食を持っていき、クルーメンバーと楽しみながら、ストレス解消をしていきたいです。想像していただきたいのですが、もしあなたが海外に行ったとすると、最初の数日は食事や環境に慣れないため、母国の食事が恋しくなると思います。宇宙でも同じです。そのため私は今回、宇宙日本食をたくさん持っていきます。」
前回のミッションから、違ったことをしようと決めたことは何かありますか。
「最初の長期滞在では、JAXAのフライトディレクタと連携してミッションに取り組んだのですが、当初考えていたよりもとても難しい仕事だと感じました。そのため宇宙飛行士の自分とは反対側の立場で運用を行うフライトディレクタの仕事を知る必要があると考え、私はJAXAのフライトディレクタの資格を取得することを決めました。フライトコントロールメンバーとしての訓練を受けてようやく資格を取得し、フライトコントロールメンバーの一員として一緒に仕事もしました。いまでは、宇宙飛行士に指令を出す立場としてのISS運用も知っているので、前回よりももっと良い仕事ができると信じています。」
2回目のISS滞在でISS船長を担いますが、どのようにこの重要な任務を行い、どのようにミッション完遂のためにクルーメンバーを支援しますか?また、緊急事態にどのように対処する予定ですか。
「第73次長期滞在の前半部分でISS船長になりますが、この新しい責務をとても楽しみにしています。基本的にISS船長の任務と責任は、まずクルーとISSの安全確保が第一だと考えています。我々はヒューストンやモスクワで非常時の訓練を何度も一緒に行っており、クルーメンバーを強く信頼しています。皆とても優秀で、パイロット出身でもあるため、非常時に素早く対応して手順通りに進めることに長けています。通常の手順とは違う状況に直面しても、新たな状況に素早く対応し、それぞれが臨機応変に役割をこなしている場面を私は何度も見てきました。ISS船長として、クルーメンバー全員の意見をよく聞いた上で、皆が満足できるような決断をしていきたいと思います。」
マクレーン宇宙飛行士と大西宇宙士にとっては、今回の長期滞在ミッションはISSに戻るということになりますが、ISSを再訪するにあたって楽しみにしていることなどあれば教えてください。
「JAXAフライトディレクタとしての経験を持って帰るというのに加えて、2016年にISSへ飛行してから9年が経ち、その間に多くの運用システムや研究が進んでいると思うので、その進歩を自分で確かめることが楽しみです。」
楽しみにしている実験や取り組みなどありますか。
「私が一番楽しみにしている実験は、静電浮遊炉(ELF)です。静電気力を使ってサンプルを浮遊させて、位置を制御します。レーザを使って、3000度近くまで加熱し、材料サンプルの液体状態での粘性や表面張力などのデータを取得する装置です。地上でも同じ実験を行いますが、地上では重力により限られた材料しか実験できないため、宇宙で実験を行います。 そして、楽しみにしている理由は、2016年のISS長期滞在時に私が実験装置の初期チェックを担当し、当初この実験装置の技術的課題に直面していた思い出があるからです。本当に小さなサンプルを静電気力を使って正確に制御することは当初考えていた時よりもはるかに難しく、ソフトウェアを改修し新しいハードウェアの開発や調整を行いました。今では「きぼう」で稼働している非常に活発な実験装置の1つであるため、今回の滞在で実験を行うことが、とても待ち遠しいです。」
以前、月へ行く想いを伺いましたが、改めて将来の月面探査ミッションへのお考えを聞かせてください。
「もちろん、機会があれば月に行きたいです。ほかの宇宙飛行士も同じ想いを持って、目標達成のためにベストを尽くそうとしているはずです。大事なことは、どんな時でも常にベストを尽くすことです。もちろん私はいつも月に行くことを夢見ていますが、今はこのミッションに集中し、一緒に長期滞在するクルーメンバーの能力を最大限発揮できるよう努めていきたいと考えており、今はこれが子供の頃からの夢の到達地点なのかもしれません。」
大西宇宙飛行士は2009年に選ばれて10年以上一番若い宇宙飛行士でしたが、今は自身より若い宇宙飛行士が誕生しました。心境の変化はありましたか。
「新しい2名の宇宙飛行士は私の大事な友人であり、とても優秀です、彼らには多くのチャンスがあります。彼らが将来、月面探査へ参加できること願い、そして最初のミッションが成功するように祈っています。」
大西宇宙飛行士らが搭乗するクルードラゴン宇宙船 運用10号機(Crew-10)の打ち上げは2025年3月13日8時48分の予定です。その模様は、JAXA Youtubeチャンネルにて中継を行いますので、ぜひご覧ください。

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