【大西宇宙飛行士ミッション報告会】 ISS長期滞在を振り返り、自身の活動内容とその成果を語りました。
約4か月にわたる国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在ミッションを終え、地球に帰還した大西卓哉宇宙飛行士。自身が滞在中に取り組んだ科学実験やその成果を多くの方に伝えるべく、11月14日(金)にミッション報告会を開催しました。会場となった帝京平成大学 池袋キャンパス 冲永記念ホールには、大西宇宙飛行士本人から直接話を聞きたいと、大勢の参加者が集結。また、報告会の様子はJAXAの公式YouTubeでもライブ配信され、宇宙飛行士の仕事、ISSでの生活を広く知っていただく貴重な機会となりました。

オープニング
イベントは、大西宇宙飛行士が行ったISS長期滞在ミッションのダイジェスト映像からスタート。打上げから帰還まで、Crew-10のクルーとして宇宙に滞在した147日の様子が紹介されました。映像の上映が終わると、進行役の桑原りさキャスターが登場し、この後のイベントの流れを説明。その後、大西宇宙飛行士が客席側から入場しました。

会場に大きな拍手が響く中、大西宇宙飛行士は来場の皆さんに手を振って応え、壇上で挨拶をしました。
大西宇宙飛行士によるISS長期滞在ミッション報告
最初のプログラムは、大西宇宙飛行士によるISS長期滞在ミッション報告です。大西宇宙飛行士は、壇上のスクリーンに映し出された映像とともに、自身の体験を振り返りました。実施した主なミッションとして、静電浮遊炉(ELF)や固体燃焼実験装置(SCEM)など、「きぼう」を代表する実験装置を用いたミッションや、Int-Ball2とCIMONという船内ドローン同士を連携しての国際協力ミッション、クルー全員が一丸となって臨む船外活動などを紹介。その他、Crew-10をまとめ、活動を指揮するISS船長としての役割や、今後の新しい宇宙開発を象徴する民間商業ミッション「Ax-4」クルーとの同時滞在を経験したことも語りました。また、食事やシャンプーをどのように行っていたのか、自由時間をどのように過ごしていたのかなど、宇宙での日常生活の様子も紹介。ISSの微小重力環境と地上との異なる点について解説しました。

宇宙実験が拓く新たな可能性~「きぼう」利用ミッション最前線~
続くトークセッションのコーナーでは、金沢工業大学の曽我部正博教授、北海道大学の藤田修教授を壇上にお迎えし、「宇宙実験が拓く新たな可能性」というテーマのもと、大西宇宙飛行士、桑原キャスターとともにトークを展開。両教授が取り組まれている研究では、「きぼう」を利用してどのような実験がされているのか、そしてその実験結果から何が得られ、地上ではどのように応用されるのか、将来の展望が語られました。

曽我部教授の研究
細胞が重力をどう感じるか、その仕組みを解き明かす研究。
解明が進むことで、寝たきりや虚弱による筋・骨萎縮をはじめ、がんを含む疾病の新しい治療法につながる可能性がある。
藤田教授の研究
地上と微小重力環境の間での物の燃えやすさの違いがどう異なるのかを明らかにする研究。
研究結果をもとにした宇宙火災安全基準を作ることで、今後の有人宇宙探査における安全・安心の確保への貢献が期待される。
地上と宇宙の連携の秘訣~ISS長期滞在ミッションの舞台裏~
しばらくの休憩を挟んだ後、今度はISS・「きぼう」の運用管制に携わるJAXAスタッフを交えて、「地上と宇宙の連携の秘訣」をテーマにした座談会がスタート。大西宇宙飛行士のミッション期間中に、インクリメントリードフライトディレクタ、インクリメントマネージャを務めた2名が壇上にあがりました。そして、それぞれの立場から、宇宙で活動する大西宇宙飛行士と運用管制チームとの連携の秘訣、チームワークの大切さを語りました。

その中で、印象的な出来事として語られたのが、海上輸送時のアクシデントでシグナス補給船の打上げが延期になり、大西宇宙飛行士の元に実験の装置やサンプルが輸送できなくなった際のエピソード。代わりにどの補給船で振り替え輸送を行うのか、予定が空いた期間の代替ミッションを何にするのか、地上ではスタッフが一丸となって調整にあたったことが語られました。その一方で、大西宇宙飛行士は運用管制チームが慌ただしい状況にあることを察知。自身のフライトディレクタとしての業務経験から、調整を行うことの大変さが容易に想像できたと説明しました。そして、あれがしたい、これがしたいと要求をダイレクトに言うことを控え、運用管制チームにプレッシャーを与えないよう配慮していたと語り、双方が思いやりながらミッションが進んでいったことを、少し懐かしそうに振り返りました。
宇宙飛行士ふたりの未来トーク~「きぼう」から広がる未来~
続いては、油井亀美也宇宙飛行士が滞在中のISSと会場をつないでのリアルタイム交信。油井宇宙飛行士と大西宇宙飛行士がトークを繰り広げました。2人はJAXA宇宙飛行士としてのキャリアスタートが同期。同僚であると同時に友人でもあり、お互いに尊敬し合う間柄です。油井宇宙飛行士は、大西宇宙飛行士が滞在するISSに自身が到着した時のことを「宇宙で親友と待ち合わせをする機会はなかなかないことなので、それが叶ってとても嬉しかった」と振り返りました。また、大西宇宙飛行士は「予定されていた補給船が来なかった関係で、できなかった実験がいくつかあったが、それを一番信頼できる油井さんに引き継いで帰ってこられたのは良かった」と述べ、2人の関係性が垣間見られました。

また、桑原キャスターから月探査や火星探査といった時代に向けての展望を問われると、油井宇宙飛行士は「行ってみたい気持ちはあるものの、私よりも若い宇宙飛行士が月や火星を目指せるようにサポートしていきたい」「もし日本が有人宇宙船を作ることがあれば再び宇宙飛行をするかもしれない」と、未来に対して期待と楽しみを持っていることを語りました。一方、大西宇宙飛行士は「ISSへの長期滞在で得た経験を武器にして、1人の宇宙飛行士として国際宇宙探査に挑戦したい」「月面を目指す宇宙飛行士として足りていないスキルを磨くことに時間を割いていきたい」と、強い意欲を語りました。
質問コーナー ~ISS長期滞在のリアルに迫るQ&A~

その後、参加者お待ちかねの質問コーナーに移り、会場では大西宇宙飛行士に向かって、続々と手が上がりました。「宇宙に行った時、いちばん大変だったことは?」「ISS船長を務めて見えてきたことは?」「ISSへの宇宙ゴミの影響は?」「月を目指すにあたって向上させたいスキルは?」「プレッシャーのある中で成果を出すためのコツは?」など、多岐にわたる質問が寄せられましたが、大西宇宙飛行士はそのひとつひとつに丁寧に回答。具体的な例や、自身の体験、感想も交えながら、分かりやすい言葉で説明しました。

エンディング
約2時間におよんだミッション報告会のラストは、大西宇宙飛行士から会場およびオンラインでイベントに参加くださった方々に向けて感謝の言葉が伝えられました。そして「宇宙飛行士のリアルな一面や仕事の内容など、知らなかったことが少しでも伝わっていれば嬉しいです」「宇宙や宇宙飛行士に興味を持ってくださった方は、また講演会などにいらしてください」と述べてミッション報告会を締めくくりました。

なお、今回のミッション報告会の様子は、YouTubeでアーカイブ配信を行なっております。当日参加ができなかった方は、ぜひご覧ください。
大西宇宙飛行士のISS滞在中の成果については、こちらでご覧いただけます。
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